風紀委員の受難

□憧れと過去
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亮平side


 ここ、私立桜咲学園は中等部から大学までのエスカレーター式となっている全寮制の男子校だ。
 莫大な学費が掛かるが、高難易度のカリキュラムと卒業後の社会的な高地位への着任が約束されたこの学園は、世界各国のセレブ達が注目する学校の1つである。
 また、お金持ちで無くても運動または勉学にて非常に優秀な成績を持つ人材を特待生として受け入れている。特待生は学費が半分以下の値段になり、部屋は無料になる。もちろん、特待生となれば常に首席か次席でなければならない。

 だが、そんな
 いかにも優秀です!
 流石エリート集団!
 といったものは表面上のことである。

 実際勉強に勤しみ、またスポーツに励むそんな優秀な生徒達はいるものの1つだけ決して公にする事ができない困った問題があったりする。それは、桜咲学園の閉鎖的な環境にある。立地条件が悪く、最寄り駅までは車でも30分近くは掛かり、大型休み以外での外出は基本的には禁止されている。そんな状況の中で、思春期真っ盛りの男子達が女の子と会う機会がほとんどない状態であればどうなるか…
 
 そこはなんとなく想像がつくだろう。
 しかし問題なのは、そこではなく
 輪姦、強姦、といった性犯罪が起こる事である。教員達はというと、注意を促すもセレブのご子息達であるから簡単に口を丸められ、仲裁にすら入る事ができないのだ。





 そこで、美化委員の面子から何人かを引き抜き風紀委員会を結成させた。初代の風紀委員達はかなり苦労したみたいだが、現在では学園の顔と言っても過言ではない程の存在感となった。初代達の苦労の賜物である。






 と、ここまで長々と語らせてもらったけど、俺 "黒川亮平" はそんな風紀委員の一員として活動している。





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「先月よりも輪姦等といった性犯罪の件数は少しではあるが減ってきている。だが悪魔でも、これは我々の目の届く範囲での話だ。今後も気を抜く事のないようしっかりと対策を練り、桜咲学園の秩序を保てるよう精進していく事だ。以上、それぞれの仕事に取り掛かってくれ」





 この低音で色気のある声の持ち主は、我らが風紀委員長 "灰塚蓮"(はいづか れん) 先輩だ。


 癖のない艶のある黒髪、薄い唇、透き通った高い鼻、180p越えの長身、そして何と言っても凛とした灰色の瞳。眼が合うと全て見透かされているような錯覚に陥る。普段あまり笑みを浮かべる事がないため、氷の番人とも呼ばれている。



 きっとこの人が笑うと凄く綺麗なんだろうな…



 なんて思いながら、手元の資料に目をやった。
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