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□赤子のように
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「きれー…」


「簪、買ってあげようか?」


男性が女性に簪を贈り物にする意味は、既にお互い知っていた。
許嫁になったのだからそんなものはただの口約束よりも軽いものだが、女心としてはそれは大層嬉しかった



「いいの!?」


「もちろん。正式に結婚できるようになったら特別に作らせるよ。」


「しゅき」

うるうると瞳を潤ませ名無しさんは蒙恬の顔を見上げる。余裕と自信に満ち溢れていてとても大人びていた


「俺も好き。」


蒙恬は名無しさんの頭を自分の胸元へ抱き寄せると、コソッと小さく囁いた。



「(ああこれがモテる男なんだろうなあ)」



貴方のどこが好きかなんて答えていないで、私は貴方に私のどこが好きなのかを聞いてみたい。と切に思う名無しさんだった


「…こっち向いて名無しさんつけてあげる。」



名無しさんが手に取っていた琥珀色の簪を髪に刺すと、日に当たってきらりと光った。



「可愛い。似合うよ名無しさん」


「本当?ありがとう蒙恬」


「今すぐに食べちゃいたいくらいだ」


またも頭を軽く抱き、呟くように言う蒙恬の声に思わずびくりと背を反らした。


「た、食べちゃ、だめ…」


怯える小動物のような声で抱かれたところから抜け出すとくるりと背を向ける

歩き出す名無しさんに手を伸ばし肩を引くと名無しさんは驚いて後ろによろける


「…どうしてそんなに俺を煽るのが上手いの?」



「煽ってないってば…っ」


よろけた名無しさんを受け止めた蒙恬は名無しさんの腰に手を回し再び歩き出した。
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