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□振り回されて
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「おいコラァ!! 待ちやがれクソアマ!!」


秦国で窃盗を繰り返す女は住むところも身寄りもなかった

物を盗んでどうにか食い繋ぐ、娼婦などするくらいならこうして生きて行くだけでよかった

おかげで彼女は体力、脚力、頭脳に長けていた



「おい、女ァ」


走る女の前に、一人の武将が立ちはだかった

「(でかいな…)…なんだ」

男は女の前で馬を降り、女の顎を持ち上げた。


「ッ…」


外腿から短刀を抜き出した女は思いきり振ろうとした

男は許す筈もなく簡単に片手でその手を止めて女の腕を捻りあげた


「女ァ、そんなに警戒すんじゃねえよ」


くつくつと笑う男に女は更に怒りを覚えた


「…離せ」

キッときつく睨みあげても、男はその手を離さなかった

「離してやるから俺と来い」

「今までもこれからも誰かの下に着く気は無い」


「まァ、そうならそうでこの手は離さねえから連れていくだけだがなァ」


グッと腕を引き寄せると女は手を振り解こうと抵抗した


「素直に従っとけよ…」

男は間髪入れずに女の鳩尾に拳を入れた

咄嗟の出来事に防ぎきれず、女はそこで意識を手放した



「お頭! 本当にその女ウチに入れるんですか!」

切れ長目の女はお頭と呼ばれた男に声を張った


「良〜い女だろぉ〜? 気の強さも申し分ねえ。

住む場所もねえくせに上等な物着けてやがる」


男の不気味な笑みにその場にいた部下と思わしき人らは顔を引き攣らせた
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