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□残るモノ
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馬陽にて
龐煖と一騎打ちになったと、私の持ち場にも届いた


「殿ッ!!」


王騎将軍と共に森の深くへ馬を走らせたのは騰と録嗚未ら、それから飛信隊の信という少年だった


私がその地へ着いた時には、殿は馬から下ろされ皆が膝をついて涙をのんでいた


飛信隊の信は、殿の矛を両手に持ったまま呆然と立ち尽くしていた



「殿ッ!!殿!」


走る馬から飛び降り、王騎将軍の傍まで寄った


「名無しさん…、殿はもう、」


「あ゛ぁああ゛あぁあッ!!」


王騎将軍の頬を撫で、まだ口角の上がっている唇に口付けた


「名無しさんッ」


野次が聞こえるがもうなんでもいい
王騎将軍のまだ温かい手を握り、自分の頬に擦り寄せた


「殿…まだあったかいですね、…」


力を緩めるとドタッと重い片腕は地につく


「殿ッ!!殿!…ッうわああ王騎様!!
あ゛いしてるッッ!!あいしてる!!」


叫んで喉が焼けるように痛い
落ちた腕を握りしめ、天に叫んだ



「どお゛して!!どうして殿がッ…う、…ッ愛してる!!」


握りしめた拳で、王騎将軍の厚い胸板をドンドンと叩いた


「おい名無しさん!!おま「うるさいッ!!」…。」


「まだ天に昇る前にッ!!殿に聞こえるように!!」




殿に聞こえるように_________________________



私は叫び続けた。
殿を呼びかけ、愛していると。


どんどん冷たくなっていく王騎将軍の手を感じ、溢れる涙が止まらなかった


「殿…ッ名無しさんは泣き虫ですね…って、言わないの…?言わない、の…?」


冷たい王騎将軍の手で自らの濡れた頬を拭う


「名無しさん、下がりなさい」


ガシャンと甲冑の音が聞こえ振り返ると騰が立っていた


「嫌ッ!いやあ!!!」


騰は私の肩下を抱え、王騎将軍の元から引き剥がした


「名無しさん、一度冷静になれ。」


騰は私を抱えたまま馬に乗ると、部下に王騎将軍を頼み本陣へ戻った
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