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□蒙恬×ホスト
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「恬くん、今日は200万持ってきたんだけど…」

「…無理しないで、俺のお姫様。

今月もう何回俺に逢いに来てくれたの?」


ここはホストクラブ「kingdom」。
男は女に夢を見させ、大金がちり紙のように流れる場所


蒙恬はナンバーワンの座を陣取っていた



「無理なんかしてないよッ!…会いたいから」

綺麗に着飾った女は小さな膝を合わせ、蒙恬に擦り寄せた


「もう、可愛いなあ。
…グラス、空になっちゃったね?」


蒙恬は女の頬を撫で、酒と自分で恍惚とした瞳を見つめ逃さなかった


「ドンペリゴールド、いれて!」

「いいの?やったっ!ありがとう」


蒙恬がナンバーワンに昇った理由はまるで子どものような無邪気さと時折見せる色気のある姿のギャップに惹かれる女が多かったからだ


蒙恬は頬を撫でた手でするりと女の手を握り、軽く握った


「(…こういうとこなんだよなあ)」

「…○○、なんか考えてるの?もう酔っ払っちゃった?」


ボーイから届いた酒が薄くグラスに注がれ、2人は乾杯する
残ったボトルの酒を2人の前で、ヘルプの男が口からダラダラと零しながら苦しそうに呑んでいる


「ぷはッ!!」


ボトルごと呑んでいた男は口からボトルを離し、呼吸を整えようとした


男がボトルから口を離した瞬間、蒙恬は男の前に立ち、持っていたボトルを取り上げた


「あっ…恬く」

蒙恬は持ち上げたボトルをそのまま逆さにし、男の頭に残った酒をぶちまけた


「…なに休憩してるの?俺のお姫様に申し訳ないと思わないの?」


男は髪を滴らせ、頭を下げた

「も、申し訳ありませんっ…」


蒙恬は持っていたボトルをテーブルに置くと冷たい声色で放った


「…もういいよ。着替えて帰りな」

男はボーイからタオルを受け取ると、裏部屋に小走りで入っていく


「恬くん、教育係は大変だねっ」

名無しさんはグラスに残った酒をクイと一気に飲み干した

「ごめんね?名無しさん。もっとちゃんと教育しとくから…」


「ううん全然!それより、ボトル空いたからもう一本いこー!」

「そうこなくちゃ!」






「ふあ、よっぱらったあ」

「ありがとうね、名無しさん。気をつけて帰るんだよ?
家ついたらちゃんと俺に連絡してね」


外の風が妙に生暖かい
名無しさんは覚束無い足取りでタクシーを拾い、ひらひらと蒙恬に手を振った



「ういー、結局閉め時間までいたかー。
やっぱ落としたかいがあったなあ」


名無しさんが去った後、蒙恬は灯りの消えた店外で両手を組み、伸びをした


「落としたって、どこにっすか?」


蒙恬についていた男は看板のコンセントを抜きながら、蒙恬に問いかける

「バカ。風俗だよ」

「…ああ〜なるほど。」


2人は踵を返し店内へ戻る
中ではグラスを拭いたり瓶の後処理や掃除が忙しなく行われる


「ていうか蒙恬さん、今日ヘルプのやつに酒浴びせてましたよね」

カカカと声を荒らげて笑う男に、蒙恬はふっと鼻で笑った


「あいつ、今日早上がりだったんだよ。
なのにボーイは忘れて声掛けないから、濡らしてあげたの。帰りやすいでしょ?」


ふふふと笑いながら蒙恬は更衣室に入り、ネクタイを緩め、ジャケットを脱いだ


「…蒙恬さんさすがっすね」

「早く酒なくしたほうが次のボトル入るし。
まー金ない客には出来ないけど」


ワックスで軽く固めた髪を無造作に掻き、手ぐしで整え蒙恬と男は私服に着替え始める


「俺、蒙恬さん見習いますッ!」

「あはは、俺がこの店にいる間は無理だよ〜」



蒙恬は女からの連絡に目を通しながら店外へ出ていった。
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