イドへ至る森へ至るイド

□この狭い鳥籠の中で
1ページ/1ページ

四角く切り取られた空 幼き日の私の世界
窓辺に降り立った君は 月光のように 優しく笑った……



März von Ludowing(メルツ フォン ルードヴィング)
←→Elisabeth von wettin(エリーザベト フォン ヴェッティン)
運命は結ばれることのない二人を、
無慈悲なその手で引き合わせてしまった……。



冷たい土の下に 埋められたはずの
歴史の闇の中に 葬られたはずの
陰の存在


友達が欲しかったけど それがどんな物か 知らなかったよ……



無明の刻の果てに 暴かれるままの
葦毛の馬の背なに 揺らされるままの
弱き存在

 「もっと急ぎなさい!」
 「御意!」
 「もっと急ぎなさい、Walter!」
 「御意、しっかりとおつかまり下さい!ハイヤー!」



鳥籠の中にいる事 それがどんな事か 知らなかったよ
君に遇うまでは 寂しさの色も 愛しさの意味も 知らなかったよ……


君は──
嗚呼 私だけの翼(ヴィント) 外に広がる世界を
嗚呼 優しい君の瞳(ヴィンク) 教えてくれた



鬱蒼と生い茂る夜の森 足下に綺麗な花を 頭上に星屑散りばめて
二人は笑った……

「ほら見て」
「わぁ、なに〜?」
「綺麗なお花。」
「わぁ、本当」
「つけてあげるよ。」
「本当?可愛くしてね。」
「似合うよ。」
「本当、嬉しい!」
「じゃぁ今度はあっちへ行こう!」
「うん!」



どんな幸福(しあわせ)な出逢いにも 別離(わかれ)の日がある
そして それは突然訪れる 斜陽の接吻(くちづけ)

 「メル この森には長居しすぎました…もうそろそろ」
 「母上」
 「何かしら?」
 「せめて、せめて友達にお別れを言いたいのです」
 「分かりました、あの子なら特別に許しましょう。さあ、行っておいでなさい」
 「はい、行って参ります!」



「せめて私の代わりに、この娘を一緒に連れて行ってね」




「メル 絶対、絶対迎えにきてね!」
「ああ、約束さ」



(森の賢女が魔女として火刑台に送られ
後に私は彼の死を知る・・・ )



無常に流れる時がもたらしたものは
嗚呼 君の居ない灰色の季節と 唯 望みもしない婚礼


現在(いま) 水面に揺れる面影 すり抜ける過去の幻燈(ひかり)



衝動(イド)は枯れるまで 情欲(いろ)を湛えるけど
自我(エゴ)は知っている 《彼以外もう愛せない》と



狭い鳥籠の中 翼(きみ)を亡くした この世界で
地に堕ちるその刻まで 月光のように 羽ばたいてみせよう……



「弱き者、拒絶され、世界から虐げられた者同士が、
傷を舐め合っただけの幼い恋だと、キミは笑うだろうか?」



やがて疾りだす→夜の復讐劇→【第七の地平線】→物語は続く……




(さぁ…お父上がお待ちですぞ)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ