ぶっく

□西藤公園
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「ねぇ、m?」

見渡す限り白銀の世界の中に、そのまま溶けてしまいそうなくらい白い肌をしたその女性が、同じくらい白い息を吐きながら問いかけてくる。

「私はね、季節の中で一番冬が好きなの」
彼女の幸せそうな顔を横目にmは目の前に作られたぎこちない雪だるまと見つめ合っていた。

そして彼女は続けた
「だって言葉が白く見えるでしょ?」
そういって雪だるまを嬉しそうに見つめる麻衣

あぁ、そうか
この想いや言葉が白く空に上がってしまうから、君にまっすぐ伝わらないのか

そんな気持ちを誤魔化すために
「私は夏の方が好き。
だってこんなに厚着しなくていいし」
なんて言ってみたら

「そんなだから彼女の1人も出来ないんだよ」
とまるで雪のような綺麗な笑顔で返される。
君のその一言一言に私の心がどれだけ揺さぶられているのか麻衣は知ってるの?

今すぐ君を抱きしめたら、その美しい口を奪ったら、m達の関係は何か変わるのかな?

君の隣を歩く私の手が、麻衣の手を待っていることに貴方は気が付いているのかな?

『mがいい』なんて麻衣は言わないだろうけど、『mでいい』くらいは言わせて見せるよ。

きっとストレートに気持ちは伝えられないだろうけど、なるべく素直に伝えるからね。



次の春にでも




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