ぶっく

□朝陽
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机の中で私の携帯が、誰かからメッセージを受け取ったことを知らせる
講義中なこともあり、差出人が何者かだけ確認する
差出人を確認し、身体の体温が上がる


そしてmからの連絡という時点で私の頭から講義中というものは追い出され、内容にすべての集中を注ぐ

『飛鳥おはよう!
今日はちょっと早くなっちゃったから、行けないかも、ごめん!』


その内容と共に陽気な街中でよく見かけるキャラクターのスタンプが送られてくる
そのスタンプは今の私をあざ笑うかのように、小刻みに動いていた

mに少しでもかわいいと思ってもらえるように、オシャレもしたしメイクだっていつも読まないような雑誌を買って、勉強したんだよ?
それに…

「いまさらそんなこと言われても」
私の口から言葉が漏れる

『私は何時からでもいいからさ
用事終わってからじゃダメ?』
少し返信を迷って送ったメッセージ

「傍から見たらめっちゃ好きな人じゃん
まぁ、実際好きなんだけどさ」
そう独り言呟いていると、また携帯が振動する

『mの用事待ってたら遅くなっちゃうよ?』
携帯の画面からも申し訳なさそうにしているのが伝わってくる

『私は大丈夫だから!
また終わったら連絡して!』
そう返信すると、返事の代わりに先程とは違ったスタンプが了解を伝えてきた




「それにしても久々にこんなにお酒飲んだかも」
少し上機嫌で居酒屋を後にする二人

「やっぱり飛鳥とお酒飲むと会話が止まらないね」
ほんのりと顔を赤くしたmは楽しそうに続けた

「気が付いたらこんな時間だけど、飛鳥電車とか大丈夫?」

mに言われ携帯を見ると、私の家へ向かう電車の最終時刻はとうに過ぎていた

「飛鳥の家の方面の終電もう過ぎてるよね
どっか、ネカフェとか行く?
それともmの家すぐそこだから、始発出るまでmの家来る?」

「お邪魔しちゃってもいいの?
迷惑じゃない?」
私は平常心を装って聞き返す

「全然大丈夫だよ、始発の時間だとm寝ちゃってるかもしれないけど、気にせず帰っていいからね!」



初めて上がるmのお家は、話に聞いていた以上に何も物がなかった
まさに睡眠をとるためだけの、仮眠室のような部屋だった

「mの部屋、本当に何もないんだね?」
「だから言ったでしょ?
何もないつまらない部屋だよって
本当に睡眠をとるためだけにしか利用しないし」

そう話すとmは私の袖を引っ張り、ベットへと押し倒す
私が気が付いたころには、mの顔が目の前に

「ちょっとmどうしたの、急に」
私はテンプレートのような言葉を並べる

「飛鳥、終電逃して何のつもり?」
彼女はいたずらっ子の笑顔をこちらに向ける

「mが気が付いてないと思った?
飛鳥がわざわざこんな遅い時間から、お酒飲みたいなんて珍しいこと言うし、わざわざ私の近くの居酒屋を予約して、挙句の果てには終電の時間近くになったら、ちらちら携帯で時間チェックしちゃうんだもん
さすがにあそこまでされたら私でも気が付くよ」
「それで、この後どうされたいの?」

こんなことになるなら、お酒の力なんて借りなければよかった
そう後悔しても現状は変わらず

「mの好きなようにして欲しい」
私の最大限の勇気を振り絞って、mの目を見て気持ちを伝える

「違うでしょ、mがシたいんじゃなくて
飛鳥がmにシて欲しいんでしょ?
ならちゃんとお願いしなきゃ」
この人はどれだけ私を恥ずかしい目に合わせれば気が済むんだ
そう思っても身体は正直で、体温が上がっていくのがわかる



そして私はmと会話することを諦め、自分の欲求に従ってmとの距離を0にした


朝陽 / あいみょん


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