ぶっく

□仕方がない
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携帯が残り少ないことを知らせる通知が届く 
いつもより携帯の減りが早い原因は、携帯の向こう側で、一人別れた彼女についての想いを何時間も話す一実のせいだ

「ねえ、m聞いてる?
さっきから携帯の通知多いけど、そこら辺の女の子の相談に乗るくらいなら、この親友の相談に乗ってくれよぅ」

さっきから何度も本当に必要なのは、彼女よりも親友だという一実の話を聞き流しながら、ほかの女の子への返信を行う

「校内一モテるmには分からないかもしれないけど、私は本当になーちゃんが大好きだったし、なーちゃんと一生二人仲良くいたいと思ってたんだよ」

携帯越しにも一実の瞳から涙がこぼれているのがわかる

「だれが校内一モテるだ
でも、一実が西野さんに本気だったのは横にいたmが一番知ってるよ」

「デートの回数減らして部活に集中したのだって、なーちゃんに試合でカッコ良い姿を見せたくて頑張ってたのに
試合後に呼び出されて急に別れてって言われたんだよ?
こんなの納得できる?」

彼女の言葉に熱が帯びる

「嫌なところあったら直すし、理由を教えてって言っても、ごめんしか言ってくれなくて
なあちゃんは私の何が嫌だったんだろう」

「今は無理かもしれないけど、一実にはmがいるし、部活もあるじゃん
きっと時間が忘れさせてくれるよ
一実にはもっといい人が現れるから」

そう伝えると電話の向こうで鼻水をすする音が聞こえる

「m〜、やっぱり持つものは親友だね
今日は長々と話し来てくれてありがとう」
そう彼女がこの長時間の会話を終わらそうとしたとき

「ハクシュッ」

一実のでもmのでもない可愛らしいくしゃみが聞こえた

「もしかしてm、誰かと一緒にいる?」
「ごめん、一実の話聞いてるときに連絡着て一人家に来たいって子がいたから、電話終わるの待ってもらってたんだ」
「そうだったの、早く言ってよ
こんなに長電話して彼女さん可哀想じゃん
とりあえず、たくさん話聞いてくれてありがとう」
そう言って電話を切ろうとする一実

「一実」
「どうしたの」
「ごめんね」
「急にどうしたの?こっちこそこんな時間までごめんだよ」
「いつも迷惑かけてばっかだからさ」
「そんなことないよ、親友なんだからさ」
「そっか、そうだよねおやすみ」
「今日は本当にありがとう、mおやすみ」

そう言って電話を切る




「親友やって」
「電話中に声出しちゃダメって言ったでしょ、七瀬」
「くしゃみなんか我慢できん、それに待たせすぎ」

mの背中に重みがかかる
そしてmの携帯を取り上げ

「いいところやったのに、途中で邪魔が入ったからやり直ししよ?
学校一のモテたらしさん」
「なんか増えてるし、数日前まで付き合ってた人のこと邪魔とか言っちゃダメだから」
「邪魔なもんは邪魔や
それに、全ての原因はmやで?」

そういって彼女は妖艶な笑顔と共に、mとの距離を埋める


ごめん一実
一実は言ったよね、親友か恋人か
一実は『本当に大切なのは親友だ〜』なんて言ってたけど、mにはどちらか一つなんて選べないや
最低なのはわかってる
仕方がないのさ、一実と同じでmも七瀬のことが好きなんだから
最終的にmを選んだのは七瀬なんだから
一実といるよりも七瀬は幸せそうだよ
結局悪いのは、奪われた一実なんだから
だからmのこと許してよ

そしてmは何も身につけていない七瀬へと触れた


僕、実は / SHISHAMO


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