ぶっく
□君の大事にしてるもの
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今日もいつもの部屋でいつもの音が鳴る
この部屋にまるで、なながいないみたいに、mはそのギターに夢中でまるでそのギターしか見えていないみたい
「なぁ、m
ななとそのレスポールどっちが大切?」
ふと心にしまっておいた想いが言葉となって溢れ出る
「どうしたの七瀬
七瀬に決まってるでしょ?」
少し困った顔をしたm
こんなのななが言わせたようなものやのに
それでも一度溢れた思いは止まらない
「じゃあそのレスポール、ベランダからなげてもええ?」
「いやいや、さすがの七瀬でも冗談きついよ」
そう言って苦笑いをするm
でもな、ななにとってはちっとも冗談じゃないんやで?
一緒にぶっ壊してあげるの大事にしてるものをななも同じくらい大事に出来たらええのに
なぜだか全部壊してしまいたくなる
ななの存在を忘れてしまうくらい好きなあの漫画も、どこが違うのか全く分からないあの靴たちも、最近名前だけやっと覚えたどうやって使うのかいまだ分からないサイン入りのエフェクターも
そしてななよりも大事そうに抱えているそのレスポールも全部一緒にぶっ壊したる
ねぇ、m、mのそばにはなな以外いらんよな?
だってななが大事にしてるものはmだけやで
それなのに
「なぁm」
「どうしたの七瀬」
「そのレスポールス触ってみたい」
「どうぞ」
そう言ってmからそのレスポールを奪い取る
そして命よりも大事だと語っていたそれを思いっきり窓の外に投げ捨てた
外は絵に描いたような雲一つない晴天で、その空に浮かんだレスポール
そしてそれを驚いた顔で見つめるm
がしゃんと大きな物音を立てて、何かが落ちたことをななたちに知らせる
「七瀬、なにやってるんだよ」
mが私を睨みつけて怒る
久々にmと目があったなあ、そんなことを考えていると顔の右側に急に強い痛みが走る
「mに殴られたのなんて初めてやね」
少し赤くなっているmの大きな手
それが私の大事なもの
ななにとって大事なものがmしかないように、mにとっての大事なものがななしか言えないように全部ぶっ壊したる
だってななにはmの大事なもの全部ゴミにしか見えへんし
「これからも二人だけでずっと仲良くしような」
mの背中に優しく語り掛けた
君の大事にしてるもの / SHISHAMO