小説

□あのね…
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あのね…今更なんだけどさ、
言わなきゃいけないことがあるんだ。

















中学最後の年
これからもさ、ずっと一緒にいれるとは思ってたけど…
一緒にプレイできるのは
数えるほどだって
心のどこかでは感じてた。

だから、一回一回の試合
二人でダブルス出来る喜びを噛み締めながら
残りの回数を惜しむようにプレイしようって

決めてたのに













「え…妊婦さん庇って、怪我?」

妊婦を助けたってとこまでは理解できた。大石は、誰よりも優しいから。

ただ…正直言えば、怪我まですることないじゃんって…
何で怪我なんかしたんだよって

試合重ねる度にイライラ募ってばっかでさ

夕方の部室で大石に色々言っちゃったことも…あったね。







あの時、さ
裏方の仕事ばっかしてる大石見てたら
なんか…怖くなっちゃって
もうプレイヤーには戻ってこないつもりなんじゃないかって

だから
西日さすあの部屋で、笑う大石に
「このままマネージャーにでもなっちゃえば?」
なんて

心にもないこと、言っちゃったんだ。


あの時の大石の悲しそうな顔
今でも忘れられないよ。

本当に、ごめんね。



あのね…
あのね大石












「泣くなよ、えーじ」

「な、泣いてなんかないよ」

強がるお前の頬には
二つの光る涙

あの頃の日々を思い出したのか
顔は浮かない。

そんな英二の頭を撫でながら優しく呟く。


「怪我をして…長いことプレイから離れて、お前を不安にさせたのは
誰でもない…俺の責任だから。

お前が謝ることなんて、なにもないんだ。

あの頃、お前が俺に言った言葉全部
俺の心に残ってる。

でもな、えーじ。
ちゃんと…わかってたから。
お前の気持ち…全て。

だから、今…この瞬間は


笑おう?
全部、ちゃらに…しちゃうくらい、さ」













二人、再びコートへ戻ったこの瞬間に

全て…これからの"強さ"に"絆"に
変わるって

俺、信じてるから。




















あのね…
これで最後にするから、聞いて欲しいんだ

あのね
ごめんね

そして
これからも
よろしくね。



「よし、俺達の力を信じよう!えーじ」

「うん!!俺達、最強の黄金ペアだもんねっ」


















さあ、行こう。

二人の舞台へ。






















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