小説
□斜陽【3】(承ポル)
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『最近、よく夢を見る。変な、夢を…』
そう、友人に相談を受けるようになったのは、高校生活も2年目に入った春の、桜のころからだったろうか…。
その友人は、僕とは全く違う人種の存在で、フツーに生きていたなら関わることすら躊躇うような人だけれど、どういうわけか、親しくしているし、僕も、彼を怖いとか思わないのが不思議なもので…
さて、話を戻すと、その友人…空条承太郎はよく上級生に睨まれては(自分から吹っかけることは絶対にないものの)トラブルに巻き込まれてばかりで、怪我が絶えずに保健室にしょっちゅういかされていた。この高校の保健医はなんとも不思議なひとで、片目が見えないらしく眼帯をしているし、フランス人なのに日本語は流暢だし、…どうしてこんな辺鄙な高校に?という感じだ。
…ああ、また話がそれたね…。その上級生からのいびりが最近やっと落ち着いた。きっと、承太郎にかなわないと、思ったんだろう…。それに伴って、承太郎は必然的に保健室から足が遠のいて行った…まあ、普通の事だろう…
けれど、そのころから、その変な夢を見る回数が増えたのだという。
内容は、よくは覚えてないらしい。夢なんて、そんなものだけれど…でも、断片的に覚えていることを聞くと、同じようなひとたちと、どうやら旅をしているのだという…
今のところ、少し寝つきが悪いくらいで、身体の不調とかは無いようで…不満はこぼすけれど、病院にまでは行こうとは思っていないみたい。
そんな話をしながら帰り道、夕焼けの中、別れた彼の背を見つめながら、思う。
起こっているんだ…やっぱり、偶然なんかじゃあ、なかったんだ…
僕たちが出会ったのも、入った高校に、彼が、いたことも…きっと…
彼に、変化が、おこっている。これからの彼の人生を大きく変える、そんな変化が…
不意に風が吹いて、空を見上げる。
昔、遠い昔、はるか遠い地でみんなで見上げた空と、なにも変わらない。
(…だって、僕も、そうだったから…)
「ね、君もそう思うだろう?
…ハイエロファント…?」
夕闇につぶやいたのは、今はいない、もう一人の僕へのメッセージ…
これから起こることを、僕は、見守ると決めた。
そう、こんどこそ、最後まで…
(斜陽、見つめる)