小説

□斜陽【7】(承ポル)
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私の人生は、ひだまりの中から始まった。
初めての子にして、五体満足で生まれた私を、両親はとても愛してくれた。少しして物心ついた頃生まれた妹もとても可愛らしく、家族四人、フランスの穏やかな空の下、慎ましやかながら充実した生活を送っていた。
…本当に、幸せな日々だった。


そんな生活に変化が生じ始めたのは、私が5,6歳の頃…一匹の犬との出会いがきっかけだった。
その日、何気なく通った路地裏で出会った彼(と表現するのが正しいかわからないが)の姿。走り去るその後ろ姿を見た瞬間、私の中で何かがはじけた。
忘れていた日々を、仲間と過ごし、死なせてしまった自分を、目の前の彼の、名を。

人の髪を噛んでは乱す、その性格そのままなイギーに出会ったその日から、私は、もう一つの人生の記憶と一緒に生きている。

その後、前世…とでもいうべきか、その記憶の中の出来事と同じことがめぐり、両親は死んだ。
そして私はシェリーと、わがまま犬イギーとの不思議な生活を送ることになった。
シェリーは本当に真っ直ぐに育ち、とても美しい女性になってくれた。スタンドなどいないこの世界では、忌まわしきあの事件は起こらず、殺されることもなかった。
が、同時に…もうひとりの自分…チャリオッツを傍に感じることの出来ないさみしさも感じていた。
とはいえ、物騒な話も特になく、ひどく平和な生活を送ることができた。

しかし、思えばその頃からだ。前世の自分の愚かな行いを思い返し、今世では…ほかの仲間を探し、幸せに、なってもらおうと、そう、決意しはじめたのは。

初めはイギー。…まぁ、シェリーや私と一緒に過ごしている彼には、全力で愛情を注いでいるつもりでいた。

問題は、ほかの仲間たちだ。
イギーのように、この世界に昔のままの姿で産み落とされているとは限らない。
それに、この広い世界の中、どうやって探し出すのか…しがない書店の店員の財力では、到底不可能だと感じながらも、諦めきれず…日々だけが過ぎていった。


そして。
あの日が来る。
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