小説

□Etoile filante(承←ポル)
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「あ、マンマ見て!流れ星!」

夜空を見上げて、子どもは無邪気に母の袖を引き、楽しげに星を追いかける。
窓から見えたのは、そんな楽しげな親子の様子。

流れ星に願い事を、というのはどこの習慣だったか…一瞬考えを巡らせて、すぐにかの国を思い出す。

今は遠き、彼のいる地。

彼とは、別れてから一度も会っていない。心に想いをしまい込んだまま、時だけが過ぎてしまった。

(元気にしているだろうか)
死の淵をさ迷った自分が何を…とも思ったが、真っ先に思い浮かぶのはそんな他愛もないことだけだった。

(成長して、勉強して、…恋を、して)
そうやって、大人になっているのだろうか。

恋、…自分がしているのは恋ではないと言い聞かせることにした。そうしなければ、…お互いダメになると思ったから。
そう、これは言うなれば…羨望だと。
言い聞かせる。言い聞かせる。

流れ星にはしゃいだ親子はもういない。
窓の外、広がるのは澄み切った夜空だけ。

一筋、光が流れた。
(おれの見た『星』は、あんなに小さくなかった。もっと…強く、輝いてて…決して、揺らぐことはなかった…)

儚げに流れ、消えた星に似つかわしくない『星』を想い、また少しだけ胸が痛んだ気がした。











一筋、また儚げに流れる星に、願いを。
(どうか、かの『星』は、落ちることのないよう)







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