小説

□雪の降らない街(創作)
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カタ



三月の風が、窓の隙間を通り抜けた。





あの冬から、もう数ヶ月が経っていた。














一息つこうと、近場にあった段ボールに腰をかけた。

そして、片付け途中の部屋を見渡した。


「この部屋、こんなに広かったんだね…。」

一人、返事など返ってこないと分かっていながらも呟く。











今まで、全てのものが二つずつあった。

歯ブラシ、コップ、洋服…


僕と君

二人分












でも、いざ二つのものを一つに片付けてみると

どんなに君が部屋の中に溢れていたかがよく分かる。





ねぇ、二つずつのものがひとつになれば、心さえも一つずつになってしまうのかな。








少し前まで隣にいて、そっと笑いかけてくれた君の顔は

今はもう小さなフレームの中。




まだ少し残っている君のかけらが、なぜかひどく切なかった。




壁に目をやると、まだ片付けられていない、二つのコートがあった。

袖が重なって、まるであの日の僕と君のよう。

でも、その時の記憶はもう、戻ってはこない。
















このままじゃ、片付かない

そう、気を取り直した時





カタン








郵便受けに、配達物が落ちる音が聞こえた。

急いで取りに行ってみると、そこには宛先も住所も無い一通の手紙が。













いつも同じ言葉で結んだ、届くはずの無いこの手紙。



分かっている。そんなこと。

でも、気持ちはちゃんと届いていると信じて

今日も机の奥に、悲しみと共にしまい込んだ。















窓の外

広がる青空

君との思い出がつまったあの季節は、はるか遠く。


できることなら

ざわめく夏や

色づく秋を越えて

あの冬空の向こうへ




決して消えることの無い雪の降る

あなたの元へ










飛んでいきたい。



















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→コブクロさんの
同題名曲のイメージ小説。

これを書いたのは実はうん年前というww
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