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□夏の終わり
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作ったのは、得意のオムライス。大石は、本当に美味しそうに食べてくれた。


すっごく、うれしい!!!!!




食べ終わって、なんとなく二人とも手持ちぶさたになった。

俺は、何気なく目の前の課題に手を伸ばした。

そして、表紙の字を見つめた。


「俺たち…。」
「ん?」
「受験生なんだね…。」
「ああ…。そうだな…。」
「これから、テニス無しの生活が始まるんだ…。



なんか、心におっきな穴が空いたみたい。」

手で胸の辺りを掴む。



壁にもたれ掛かったラケットケースに、どことなく哀愁という字があう気がした。

「でも、えーじ。俺たち同じ高校行けるじゃないか。」

そう。青学はエスカレーター式の学校だから、中高とほぼ同じ人で進学できる。


けれど…。


「分かってるよ。でもさ、不安なんだ。


これからもおーいしと一緒にいれるか…。」

「えーじ…。」

「テニスだけが俺たちを繋ぎ止めてたわけじゃない。分かってるんだ、そんなこと。でもさ…。



怖いんだよおーいし。この手から、大石秀一郎っていう存在が滑り落ちていきそうで、




怖いんだ。」

「えーじ。」


俺は自分の手のひらを見つめた。
なんて小さな手のひらなんだろう。
俺はずっと大石を、この手の中に抱いていけるのかな。



ぎゅっ、と、手を握りしめた。

不意に大石が、俺の手をそっととって、優しく広げて、そこに顔をすりよせてきた。

「おーいし…?」

俺は大石の顔をのぞきこんだ。大石は目を瞑り、気持ち良さそうにしている。

「えーじ。俺はね、こんな大好きになれる人を見つけられて、すっごく嬉しいんだ。」

「それは、俺も同じだよ?」

「俺はね、えーじの全てがいとおしくてたまらないんだ。」

「俺も、おーいしの全てが大好きだよ?」




「なら、なにも心配することはないよ。だって俺たちこんなにも



愛し合っているんだから。」
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