Main@

□終焉という名の先―誠実の君―#
3ページ/5ページ

あれから秋が少しだけ嫌いになった。


君の居ない生活に慣れたつもりでいても、この季節になってしまうとやっぱり

「寂しいんだよ…おーいし。」

あの日吹いた風に似た匂いが鼻をくすぐる。

さわっ


草木が揺れた。








ふと目をやった道端に

それは咲いていた。

「りんどうの…花。」

自然と足が向く。


手にしたその花は
鮮やかな紫の色をたたえながら
地面に立っていた。

時折吹く強い風に靡きながらも
決して倒れはしない。

強い
花。

花言葉は



「…誠実…」

まるで君のようだね。


目を閉じて、君との思い出の数々を巡る。

誠実を絵に描いたような君。

いつでも誰にでも
手を差しのべ

いつでも誰とでも
同じ涙を流した。



「そっか。会いに来てくれたんだね…?」
指で花弁をなぞる。

「俺が、これ以上哀しまないように。」



君は何処にいても、俺の心配をするんだね。

「秋も、嫌いじゃないや。」
そう、思えた。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ