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□終焉という名の先―菊の花が散る―#
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いつもの道を
いつもの様に

歩いた。


見上げると、茜に染まった空が広がる。
それは、確実に近づいている秋を身近に感じさせた。

またあの季節が
俺のもとにやって来る。



「みゃあ。」
鳴き声が聞こえた。

辺りを見渡すと、電信柱の後ろに段ボールがあり、その中に
仔猫がいた。

「…独りか?」
しゃがみこんだその先に、濡れた瞳があった。
「…み…」
仔猫は力弱く答え、身体を震わせた。
「そうか…俺もだ。」




あの日握った君の冷たい手の感触を
俺は今でも忘れたことはない。
あの日、吹いた秋の風も
忘れたことはない。



あの日から
秋が嫌いになった。

「一緒来るか?」
手に弱った仔猫を抱きしめ、俺は家に向かった。



俺の背中を

風が



押した。
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