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□歴代Web拍手作品集
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キミの家へと向かう途中。
ふと目をやった草原に…。

―――
「おーいしー?!いいものあるんだ。」
キミがそう言って差し出した手の中には。
「…薔薇?」
紅く、儚く咲く、一輪の綺麗な薔薇が握られていた。

「…って、えーじ。素手でとってきたのか?」
「え…うん。」
「ほら、手。見せてみろ。トゲだらけじゃないか。」
「あう…。」
「まったく。」
俺はそう言うと、英二の手から薔薇を受け取り、英二の手のひらに目を向ける。
「素手で摘むなんて、痛いとか思わなかったのか?」
「うん。だってさ、おーいしに見せたかったんだ。

あの薔薇を…。」
俺たちは同時に机の上の深紅の薔薇を見つめた。
「あの薔薇ね、一人で咲いてたんだよ。たった一人で、寂しく…。でも見てよ。あんなに綺麗に輝いてる。

薔薇って、強いんだな。」

「えーじ。」
「えへへ。俺もあの薔薇みたいに強くなりたいなー、なんて…。…やっぱ無理。」
「ん?」
「おーいしー、手がジンジンする…。」
「だから言っただろ?小さいトゲは後から痛いんだよ。」

俺は英二の手から優しく刺を抜いていく。

「むぅ…。」
「でも、嬉しいよ。
えーじ。ありがとう。」

少し涙目で膨れる英二の頬を俺は優しく指でなぞった。

「くすぐったい…。おーいし。」
くすぐったそうに目を細める英二が、


愛しくてたまらなかった。





――
「終わったぞ、えーじ。」
手の治療が終わって、傍らの英二に声をかけたが…。

返事は無い。

「?えーじ?」
不思議に思って、英二の顔を覗きこむと


英二は幸せそうな顔をして、寝息をたてていた。

「なんだ。寝ちゃったのか…。」

俺は英二をソファーに寝かせた。





「お茶でも煎れようかな?」


そう思い立ち上がろうとしたとき。



「おーいし。














だあいすき。」


そんな英二の寝言が聞こえた。






「ふふ、俺もだよ。」





俺は静かに、その愛らしい唇に短いキスをした。













貴方は知っているだろうか。









俺にとっての美しい薔薇は

















貴方なのだということを…。













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