小説
□掠れた声と、消えた鳥(佐幸#)
2ページ/2ページ
「ちがっ…さすけ、俺は星など欲しくは…!!」
あれ、泣き止むどころか、余計、泣かせちゃったみたい…?
困ったなぁ…
「とって…もどって、くる…からね。そうしたら…ふた、りで…みよ、う?」
「もう…もう良いのだ…さすけ。」
闇が間近まで迫っているのが分かる。
瞼が重く、閉じられようとしている。
それがとてももどかしいのだけれど、逆らえない『運命』は、俺をそちらへ引っ張ろうと俺の全てを奪っていく。
そしてそれを知ってか知らずか、旦那はより強い力で俺の体を抱く。
その手は、震えていた。
「だ……いじょ、うぶ…。す…ぐ、もどって…く、るから。…まって……て。」
「っひっく…やだ、やだ…さすけ…逝くな…。」
また戻ってくる。
あなたの涙を今度こそ拭いてあげるために。
それは約束ではなく、決意だ。
「そ………した、ら…い、えるか…な…?」
もう、旦那の声も聞こえないけれど
何もかもを奪われたこんな俺だけど
心の隅に、まだ強い光が残っているのに気が付く。
それは、ずっと昔から持っていて、伝えることの出来なかった、熱い想い。
「ずっ…………と……、……な、が………。」
嗚呼、ダメだよ旦那。
もう、時間だ。
「…すけ…?」
一つだけ、神様の気まぐれで、こんな罪深い忍の願いが叶うなら
体は朽ちても、この想いだけは消えないで欲しい。
そう…だな、ほしになって…光り続けられたら、いいな…。
「…うそだ。そんな…さ、すけ…っさすけぇえええー!!」
掠れた声と、消えた鳥
血濡れた烏を抱いた彼は、何度も其の名を呼び続け
声が掠れても呼び続け
そのまま、戦禍に呑まれて、彼の命も消えてしまった。
.