短編
□そんなもの、こっちが聞きたい(佐幸#)
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ただでさえ蒸し暑い部屋の中、上がった体温はなかなか冷めず、吐息は生温く互いの頬を掠めた。
弾けた思考を再び逆なでするように快楽の残り香が身体を駆け巡る。
いちいち反応してしまう己が情けなかったが、コイツに良いように調教されてしまったのだからどうしようもない。
璧のような汗が、俺に覆いかぶさるアイツの頬から俺の頬へと滑り降りてきた。
鬱陶しかった。本当に。
散々欲望を吐き出しておいて、労いの一つもせず、何事もなかったかのようにアイツは部屋を去って行った。
代償として失ったものは多い。与えられるソレよりもはるかに。
それでもこの関係を止めないのはなぜだろう。
上がった息が整うまで、今日は時間がかかった。
服もそのままに、ただベットに横たわり天井を見つめる。
戻ってきたアイツが、俺の身体を何も言わずに清めていく。
その細い指は、俺を時には陶器のように扱い、時にははちきれんばかりの欲のはけ口として扱う。
どっちが本当のお前なんだと、掠れた喉で問い掛ければ、どっちも俺だよと、何食わぬ顔でかえされた。
恋人と呼べないこの関係
言うなれば欲の吐き出しあい
俺はコイツが死ぬほど好きなのに
コイツは俺だけを見ようとはしない
不毛な恋
そんなもの始めから分かっていたのだ
それでも
想いの伴わない身体だけの関係が
嫌だと、逃げ出したいと
楽になりたいと
どれだけ願おうとも
「っ…ぁふ…。」
清めるアイツのその行為にさえ快楽を見出だす己の身体が
それを許してはくれないのだ
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離れたくないのは
愛の為?それとも禁断の果実を二人でかじるため?
そんなこと
『こっちが聞きたい』
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微妙にエロい気が…するようなしないような。