短編
□夕暮れは…(佐→幸)
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何もなしに
ただ、ただ…ぼんやりと茜に染まる空を見上げる。
ずっと嫌だったこの赤毛を
夕日に似た色だと、幼い日に形容してくれた彼の笑顔
今も変わらぬ彼
変わってしまった俺の心
立ちはだかる越えられない、壁
だのに…
彼への想いは浮かんでは消え
忍びである俺の胸を、あってはいけない熱で溶かしていく。
「夕暮れは
雲のはたてに
ものぞ思ふ
天つ空なる
人を恋ふとて」
どうしたらいいか、なんて
空に問うても意味がないって
分かっているのに
――――――
(夕暮れ時は、遥かな雲の果てに向かって物思いをすることだ。
天上にいるような、とても手の届かない人に恋をしているので。)
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