小説

□vivi(下上#)[pkmn.BW]
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双子

生まれる時が同じであったとしても
二人の人間である以上
死ぬ時は別々

そんなもの、当たり前のことなのでしょうね?















「…どうしました、クダリ」

今日の業務が全て終了し、帰宅し互いの部屋で眠りについていたはずでしたのに
目の前で開いた扉
その向こうから、目元を濡らした最愛の片割れがひたひたと近づいてきた。

だいたいの状況は理解できたのですが(多分嫌な夢でも見たのでしょう)
こういうとき、彼自身から話してくれるのを待つ以外、私にできることはございません。
ですので今日も私は、クダリが落ち着いて話してくれるまで、ベッドに彼の身体を引き寄せ抱きしめながら、幼子をあやすかのように背中を優しくさすってさしあげたのでございます。

「…ボク、夢見たの」
やっと嗚咽が止み、私の肩の上に顔を落としながら、クダリはぽつりとそう呟いた。

「どのような夢でございますか?」

「…ボクが、ね」

「クダリ、が…?」

「ノボリより先に…死んじゃう夢…」

「…あら、それは…また…

悲しい夢で、ございますね」

先程まで見ていた夢のことを思い出したのか、また肩を揺らしはじめたクダリの背を優しく、一定のリズムで叩く

それが一番クダリが落ち着くこと…

そして、あなたは今ちゃんとここにいると優しく教えてあげられる方法…

「クダリ、大丈夫でございますよ…あなたは今、ここにいます

私の側に」

「…でも、いつかはお別れしなきゃいけないんでしょ?

ねえノボリ、どうしてボクたちずっと一緒にいられないの?
生まれる時は一緒だったのに!
一緒にいられなくなるなんて…
嫌だ…いやだよ…」

こどものように駄々をこね泣き出す我が弟

生まれる時が同じでも
この世に生まれ落ちた瞬間から二人の人間として存在しなければならない


私たち…双子という存在

特に、私たちは…その、他の双子よりも互いを互いが必要とし、離れがたいと思っている(ように思います)。

クダリが離別を恐れる理由も、わからなくは無いのです。

ですが…

「そうでございますね…私もクダリが先にいなくなってしまうのは…とても寂しくて…悲しいです。
ですが…いいですか、クダリ

もし私が先に逝ってしまったら
私はクダリに私の分まで生きて欲しいと思うと…思います。

死後、魂がどこへ向かい、どうなるのかは、私も知りません。
ですが、身体が朽ち果てた後も、私はクダリのことをずっと考えるでしょう。
そして、私のやり残したことをクダリがやり遂げてくれる…その姿を、近くで見守るでしょう…

つまり何がいいたいのかといいますと…」

「…、何があってもボクとノボリは一緒ってこと?」

「ええ、そうです

人を想う…その気持ちに生者か死者かなどは
関係ないことだと…私は考えていますから」

「…そっ、か…」

「ええ、そうでございますよきっと」





我ながら、非科学的なことを言ったものだと思いながらも、やっといつもの笑顔を見せてくれたクダリの姿に心が温かくなったことだけは

今、この瞬間でも鮮明に思い出せるのでございます。












嗚呼、だからクダリ?






















「そんなに…泣かないで下さい、まし…」

視界の中の虚になった最愛の弟の涙を拭いたいですのに…もうこの身体は……私は………














サブウェイで、事故が起こって…
お客さんを庇ったノボリは
ひどいけが、で…

ノボリが死んじゃうって思ったら
悲しくて
寂しくて

涙、止まらない


そしたらノボリが、前にボクが夢を見たときの話を
途切れとぎれにしはじめたから


泣き止んで、ちゃんと言わなきゃって…
思うのに、ね

やっぱりだめだよ
涙でうまく言えないんだ、ノボリ








ノボリ…嫌だよ…ボク…やっぱり…

だけど、ノボリが苦しそうに顔をしかめて…
息も、荒くなって
もう、長くないって…わかった瞬間

ボクの中の色んな想いが次々に溢れ出して…



「ボ…ボク、一人だなんて、一人になるなんて…思って、無いよ!
ノボリとは…ずっと一緒…だよね

ノボリの夢も、気持ちも全部ボク忘れたりしない!
ボク、前向いて歩く!

だから…だから…

いつか、ね
ボクが頑張るのに疲れちゃったその時は……その、時…はっ…」

「…迎えに、参ります…私が、あなたを
抱きしめます…愛する、あなたを…クダリ」

最後の方、涙で上手く言えなかったけど
ノボリが、そう…ふわっと笑いながら言ってくれたから

ボク、笑って見送れたんだ
ノボリを















vivi
(私たちの
僕らの
絆の前では

生も死も
意味をなさない)




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だって、ずっと一緒なんだもの











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