小説

□雑音(佐幸#)
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闇に紛れ命を刈る。


それが仕事。


今日も今日とて刃を握り、闇夜を駆ける、一陣の風になりに行こう。


























その屋敷に忍び込むのは容易かった。









いつものように指示された屋敷へ向かえば、見張りは少なく、完全に寝静まっていて、ちょっと呆れた。


音を立てずに目的の部屋に忍び込むと、殺すべきソイツは暢気に寝ていた。


手に慣れないくないを握り、無心でソレを振り下ろした。














何度人を殺ってもこの瞬間だけは未だに"慣れ"ない。


生暖かい血が頬を伝う。気持ち悪いったらありゃしない。


でも、でもこの頃は…










少しだけ、楽しんでいるような気がする。















「…手応え無さすぎ…。」


証拠を隠滅しながら、足元の人だったものを見る、嗚呼なんて汚らわしいんだ。






「でも、まぁ、これも旦那の為だから、許してね?」


なんて、自分の行いを正当化してみる。


そう、血生臭い仕事全ては我が主のため。


そこには俺の感情など存在しない。














しない…はずだ。




















帰り道、俺様としたことが、さっきのヤツの家の忍たちに囲まれた。


考え事なんかするからだよね、俺様反省。


「まぁたくさんいても雑魚は雑魚だもんねぇ。」


「なんだとっ!?主の敵っ!!」


そう言って俺に斬りかかる忍たちの目には、忍には珍しく主への確かな忠誠心が垣間見えた。









あぁまた俺様ってば人を殺しちゃってるよ。


「じゃま。俺様は早く帰りたいの。」


「このっ……ぐはぁっ!!」


ごめんねー、腕切っちゃって。


「このっ…!!…?」


「残念、俺様はこっち。」


ザクリと確かな質量と音を伴ってまた血飛沫が舞う。


俺、この朱は嫌いなんだよね。













そう、俺と似ている、主を何より大切にしているこいつらを殺すのだって…旦那のためだから…















『佐助っ、団子!!』








…あれ、おかしいな。









「我らを、甘く見るなぁっ!!」


「っとと、そうこなくちゃ…、つまらないもんね。」


一番得意な武器に持ちかえ、本格的にたな…。」


「あれ、まさか逃げるなんて寂しいこと言わないよね?」


次のヤツは足を狙おう。そうすれば簡単に行動不可にできる。
















『佐助…


すっ…す…好いて、おる。』














もう、さっきからなんなのさ…。














「…あー、やっちゃった…。」


思わずため息をつけば、周りは死体だらけ。


俺自身も返り血で血塗れ。気持ち悪い。









不思議と罪の意識はない。


だって











「これも全部、旦那のためだから。」










だからこのクツクツと込み上げるような笑いだって…旦那の役に立ったから笑ってるだけであって、決して人を殺すのが楽しいわけじゃ、ない。

















筈なのに…














『佐助。ありがとう。』













どうして旦那の声が


顔が


ちらついて


その度に心が痛むんだろう?

























雑音


邪魔でしょうがなかった。
たとえそれが主の声でも。


















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