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□いいから何も言わないで
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「っはぁっ…。」


「えーじ、本気でしろ!!」


















ラケットを握る手が震える


力が入らなくて、まともに試合が出来ない。










この試合に勝てば


俺は次のステージへと進める


同時に大石はこの場を去る












「…で、きなぃ。」


「…何だって?」















「おーいしを負かすなんて出来ないよ!!」

















シングルスの実力は確かに俺の方が上。


でも、自分で未来をたつような真似…













「やくそく、したじゃんかぁ…。また、ダブルスする、って……。」


「…それとこれとは、話が別だろ。」


「…そんなこと…!!」



















これが引き金になって


テニスと言う名の絆が引きちぎられる気がして













俺は思わず膝をついた












「試合放棄、するつもりか?」


「………。」


「そんなんで勝ったって嬉しくないって、分かってるだろ!?」


「でもぉっ…。」



















ダメなんだよ


身体が鉛になったみたいだよ


動かないよ


もう、何もしたくないよ















俺はただ


二人で、みんなで


テニスが出来れば良かったんだ















それなのに

















「…えーじ、そんなこと考えてたのか?」


「………?」











一瞬覚えたあの感覚


二人が一つになるような感覚


瞬きの間に戻った世界には


呆れた、って感丸出しの大石の顔















「そ、んなこと?」


「今さらじゃないか。


俺たち、ダブルス組んでなくたって繋がってるってこと。











それに











もう、立ち止まったままじゃいられないだろ?



俺も、お前も。」



















注意をしようにも出来ないでいる審判にタイムを正式に告げ、大石はネットを飛び越え俺を立たせた。














「えーじ、何もあの約束は"今"叶わなくたっていいだろ?


いつか、またダブルス組んだ時、お互いがお互いに強くなって、最強ダブルスになればいいんだよ。











歩きださなきゃ、俺もお前も、より高見を目指すために。


また一緒に、黄金ペアと呼ばれるために。














だからお前は全力で戦うんだ。


そして次に進んで、色んなモノを見ておいで。


いつか、俺たちの糧になるように。


俺も負けない。


お前に負けない位頑張る。


お前の隣にいれるのは








俺だけだって


認めさせてやるために。」


















その後の試合は


不思議と苦痛にはならなくて


結果は俺が勝ったけど


大石に対する後ろめたさなんかは


全く感じなくて

















「おーいし、ラケット、置いてけよ。」


「え…?」

















「お前も一緒にいくんだかんな。」


















あとはもう











なにもいわなくていい。































-fin-
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