Main@

□Beating of the heart.
1ページ/6ページ

ドキドキするとか
ゾクゾクするとか
ズキズキするとか
ワクワクするとか


そういうのを胸にすると、

ふと、



ああ、これが幸せってことなのかなと



柄にもなく思ったりする。








**Beating of the heart**

「おっじゃましま〜す。」
久しぶりの部屋の匂いに、思わず頬が緩む。
「どーぞ。」
招き入れるその仕草は、紳士のそれで、自分がなにか、特別な身分にでもなったかのように思える。



今日俺は、学校帰りに大石の家に来ている。

名目は"勉強"だけど、本当はそんな気あんまりない。
ただ、側にいたいだけ。
ただ、貴方を感じていたいだけ。
そんな、理由だった。

「えーじ、ジュースとお茶、どっちがいい?」
机のライトのスイッチを入れながら、大石は俺に聞く。

本当は、大石のいれる少し甘くて少し苦い、コーヒーが飲みたい…
なんて言えない。


けれど―――…。

クスッ
「………。分かった。コーヒーが飲みたいんだろ?」

「え…。なんで分かったの?」

俺は多分、目を丸くしてただろう。

普段、以心伝心とか、表裏一体とか、ダブルスしてるからそんなことを言われるし、俺も、プレーの面ではそう思える時間が何度かあった。

けれど、こんな日常でまで気持ちを読まれるなんて、凄くびっくりした。

「ん?なんとなくそんな感じしたんだ。今いれてきてやるから、ちょっと待ってて。」

そう言うと大石は、俺に笑いかけながら、静かに部屋を出ていった。












なんでかな…。
そんなに顔に出てたかな…?

俺は、近くにあった大きめの鏡に自分の顔を映した。

そこに映る、絆創膏がついた顔。
俺は頬を指でなぞった。

「分かりやすい奴なのかにゃ…、俺って…。」

試しに色んな顔をしてみる。


にぃって笑って
ぷぅって怒って
いぃってして
指で口を開けて…



「なにやってんだ?」
後ろから、少し呆れた声が聞こえて、そのままの顔で振りかえる。
「おーいひ…?」
「っふは、なんだえーじ、その顔っ…!!あはははっ。」

大石は、持ってきたトレーを机に置くと、本格的に笑い始めた。


.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ