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□Beating of the heart.
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ドキドキするとか
ゾクゾクするとか
ズキズキするとか
ワクワクするとか
そういうのを胸にすると、
ふと、
ああ、これが幸せってことなのかなと
柄にもなく思ったりする。
**Beating of the heart**
「おっじゃましま〜す。」
久しぶりの部屋の匂いに、思わず頬が緩む。
「どーぞ。」
招き入れるその仕草は、紳士のそれで、自分がなにか、特別な身分にでもなったかのように思える。
今日俺は、学校帰りに大石の家に来ている。
名目は"勉強"だけど、本当はそんな気あんまりない。
ただ、側にいたいだけ。
ただ、貴方を感じていたいだけ。
そんな、理由だった。
「えーじ、ジュースとお茶、どっちがいい?」
机のライトのスイッチを入れながら、大石は俺に聞く。
本当は、大石のいれる少し甘くて少し苦い、コーヒーが飲みたい…
なんて言えない。
けれど―――…。
クスッ
「………。分かった。コーヒーが飲みたいんだろ?」
「え…。なんで分かったの?」
俺は多分、目を丸くしてただろう。
普段、以心伝心とか、表裏一体とか、ダブルスしてるからそんなことを言われるし、俺も、プレーの面ではそう思える時間が何度かあった。
けれど、こんな日常でまで気持ちを読まれるなんて、凄くびっくりした。
「ん?なんとなくそんな感じしたんだ。今いれてきてやるから、ちょっと待ってて。」
そう言うと大石は、俺に笑いかけながら、静かに部屋を出ていった。
なんでかな…。
そんなに顔に出てたかな…?
俺は、近くにあった大きめの鏡に自分の顔を映した。
そこに映る、絆創膏がついた顔。
俺は頬を指でなぞった。
「分かりやすい奴なのかにゃ…、俺って…。」
試しに色んな顔をしてみる。
にぃって笑って
ぷぅって怒って
いぃってして
指で口を開けて…
「なにやってんだ?」
後ろから、少し呆れた声が聞こえて、そのままの顔で振りかえる。
「おーいひ…?」
「っふは、なんだえーじ、その顔っ…!!あはははっ。」
大石は、持ってきたトレーを机に置くと、本格的に笑い始めた。
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