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□パンの好み
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三年一緒にいるけど
これは知らなかった。
**パンの好み**
「見てみて、新しい味のパンー!!購買で売ってたの。」
お昼休み、学校の屋上で。
俺たちはお昼ご飯を食べようとしていた。
「へえ、俺あんまり購買行かないから分からなかった。」
そうだよねえ、と、英二は俺の顔を覗きこんだ。
「ん?」
「おーいしは…、パン嫌いなの?」
「…え?」
たまに、英二の考えていることが分からない時がある。
そう、シンクロとかなんかやってる間にも。
「…いや。嫌いじゃないけど。
なんで?」
「…いや…うんと…。」
聞き返すと、なぜか英二は照れたようにうつ向いてしまった。
ただ、ご飯を食べる音だけが響く。
「おーいしさあ、どんなパンが好き?」
「んん…?えっと…。餡パンは…好きだよ。」
「ふーん。」
「ねえ、なに…?」
「…え、なんでもないよ。」
なんでもない顔じゃない。
うつ向いたまま、考え事をするから…。
俺は、英二の頭をそっと撫でた。
「ふぇ…。」
「なに悩んでんだ?そんな顔してちゃ、ご飯まずくなるだろ?」
「…ごめん。」
しゅん、と、急にしおらしくなった英二の身体を、そっと腕の中に抱いた。
「どうした?」
俺は重ね重ね聞いた。
「…あのね、
おーいしにパン焼こうかな…と。」
「…え??」
「いや、この頃さあ、パン焼く練習はじめてさ。」
「…ぅん。」
「おーいしに、焼いてあげたいなって…。」
「…。」
「でも、おーいしはあんまりパン食べないから。どうしようかなって…、思って。」
「…そうだったんだ…。」
「んでも、餡パンでしょ?俺、明日焼いてくるから。」
「それじゃ、俺もなにか作ってこようかな…?」
「え…?」
俺は蒼く広がる穹を仰ぎながら、英二をよりきつく抱き締めた。
「二人で…さ、
楽しいお昼にしような。」
「えへ…、うん。」
俺の
君の
細やかな幸せのため。