砂時計

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蒼空が教団に来て数日が経ったある日。
広い教団の建物内で、ひとりで歩いても迷子にならないぐらいには慣れてきた。
相変わらず食堂の「食べたいもの何でもオーダーできる」システムでは毎度迷うこと以外には、環境も身近な人間関係も順応している。


「やあ蒼空ちゃん。調子はどう?」
『順調ですよ。生活は。ここの環境や人にも馴染んできたし』

蒼空はコムイに呼ばれ室長室に来ていた。
コムイがコーヒーとお菓子を出してくれたので、コーヒーをひとくち頂く。

『でも、このまま何もしないでいたら、シンクロ率も上がらないし発動も出来ない気がして・・・今の私に出来る事、何かないですか?』
「蒼空ちゃんは、戦場にでてAKUMAやノア、千年伯爵と戦うのが怖くないの?」
『それを、私に聞きますか?』
「酷いことを聞いているのは分かってる。エクソシストにこの戦いは避けて通れない運命だ・・・でもね、キミにとってこの戦いは本来なら無縁の筈だった。今この状況ですぐにイノセンスを発動する訓練をして戦場に送り出したら・・・蒼空ちゃんが壊れてしまう気がするんだ」
『そういう、事情があったんですね』
「うん。だから、蒼空ちゃんが「今」どう思ってるのか知りたいんだ」

さっきまでは、イノセンスを扱えない名前だけのエクソシスト、という事に焦りを感じていた。
神田やラビだけじゃなく、年下のアレンや女の子のリナリーが任務に行くのを見送るだけで、何もできないことが申し訳なくて。
そういう思いでいたけど、コムイさんの考えを知って、今は・・・

『申し訳ないとか焦りとか、そういう思いではなく自分の意志で、エクソシストになりたい』
「きっと蒼空ちゃんが思っている以上に過酷だよ」
『それでも、私は一人前のエクソシストになってみんなと同じ目線に立ちたい』
「・・・そう」
『イノセンスを発動する訓練をさせてください。お願いします』

蒼空が頭を下げると、こちらこそよろしく、と室長も頭を下げた。

丁度その時、室長室にノックがあった。
コムイが返事をするとドアが開いて、入って来たのはジョニーだった。

「室長、蒼空の団服が出来ました。あ、蒼空もここにいたんだ!丁度良いや、試着してみて」

ジョニーに渡された団服は、リナリーと同じデザインでお願いしたので、長身のリナリーより幾分サイズの小さい団服が渡された。

「隣の部屋が空いてるから、そこで着替えておいで」
『はいっ!!』
「嬉しそうだね、蒼空ちゃん」
「喜んでもらえると作り甲斐があるッス」



着替えて部屋に戻ると、部屋にはリーバーさんも来ていた。
蒼空の姿を見ると、三人は口を揃えて「似合ってる」と言ってくれた。

『サイズがピッタリで、思ってたよりも動きやすいよ』
「そう?じゃあ、これであと何着か作るね」
『ありがとう!!』
「他に何か付け足して欲しいこととかある?例えばアレンならフード、ラビならバンダナとかも作ったんだけど」
『うーん・・・今のところはいいや。後から必要になったらお願いするね』
「うん」

「蒼空、イノセンス発動の訓練・・・始めるんだってな」
『うん。ちゃんと自分の意志で選んだよ』
「おう」
『やるからには気合いれてくぞー!!』
「蒼空ちゃん元気だねぇ」
『はい、充電満タンです!!』
「お、じゃあ僕は蒼空ちゃんから若いパワー貰おっと」
『え?』

コムイにギューっと抱きしめられる、というより190ある彼に低身長の蒼空は埋まってしまう。

「コムイ室長それセクハラです!!」

リーバーが埋もれる蒼空を慌てて救出した。
コムイは気にする様子もなく、よし元気が出た、と言うので蒼空はちょっと嬉しくなる。

『リーバーさんとジョニーにも分けてあげる』

リーバーとも30センチの身長差があるので彼のみぞおち辺りにギューと元気パワーを送り込む。

「ね、元気出るでしょ」
「・・・そうっすね」
「これでリーバー君も同罪だね」
「・・・・・・。」

ジョニーにもパワーを送り込むべく抱きつくと、コムイやリーバーに微笑まれる。

「コイツら可愛いっすね」
「こう見るとジョニー君も大きく見えるなぁ」

『元気出た?』
「うん、ありがとう。これで団服作るのも捗りそうだよ」
『やったー!!これからもお疲れの時は私の元気を分けてあげる』
「やっぱり蒼空ちゃんエクソシストにするのやめて科学班のマスコットにしちゃおうよ」
『それはダメです』
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