砂時計
□006
1ページ/9ページ
『ばか。ばか。ばか。ばかぁー!』
蒼空と神田は食堂のテーブルでご飯を食べていた。
蒼空はオムライス
神田はもちろん蕎麦。
神「あー、分かったからさっさと食えよ」
『うわーん、ばか、ばか、おいしいよー、ばかぁ!』
神「バカにするか味わって食うかどっちかにしやがれ」
『美味しいよぉ〜!卵ふわふわでとろとろ!』
卵もご飯も絶妙にマッチしていて凄く美味しい。
『美味しい♡』
神「・・・」
さっきから神田がじーっと蒼空の食べる様子を見ている。
ふっふっふっ、羨ましいんだな☆
『あげないからね!』
神「いらねーよ、んなお子様ランチ」
『お子・・・』
(回想・・・)
オムレツの頂点には、ジェリーがサービスして小さな旗を付けてくれたのだった。
蒼空はそれを見て子供のようにはしゃいでいた。
(回想終)
『・・・じゃぁ何でじーっと見てるの』
神「いや・・・ただ、旨そうな顔して食うな、と思って」
『だって美味しいんだもん!神田はもっと美味しそうな顔して食べたら?』
神「?旨そうに食ってないか?」
『だって無表情じゃん。もっと感情出していいんじゃない?』
神「はぁ?」
SIDE 神田
『神田ってさ、あんまり感情出さないけど・・・もっと出したらいいと思う』
神「・・・。」
『いっつもムスッとしてるから、いろんな人に誤解されちゃうんだよ』
神「・・・貴様、何が言いたいんだ」
神田がキッと睨みつける。
蒼空はそれでもお構いなく続けた。
『あのね、たまに聞くんだ。神田は厳しくて冷血で酷い人間だって陰で言われてること』
んなこと昔から知ってる。
実際そうだし、周りにどう思われようとどうでもいいことだ。
神「まぁ、実際そうだしな。・・・で、何だよ」
『私は、神田は凄く優しくていい人だと思ってる』
神「俺が優しい?お前、おかしいんじゃねーの」
『確かに、第一印象最悪だったし、いっつもムスッとしてるし、さっきだっていぢわるだったけど、ホントは凄く優しい人・・・でしょ?』
神「知らねーよ」
『・・・だから、私はそんな神田が好きだし、色々知りたいって思う。どんなときに何を思うかとか、何が好きとか、何でもいいから知りたい。・・・だめ?』
俺を知りたい?
意味分かんねーし。
・・・好きなヤツにそう言われるのは嬉しい。
だけど、俺は傷つけることしか知らないんだ。
神「・・・・・・お前、ウザイ」
ほら、また傷つける言葉しか言えない。
蒼空の傷ついた顔を見たくなくて、俯いて蕎麦を食べる。
『今頃知ったの?バカだね、神田って』
・・・は?
神田が顔をあげると楽しそうに笑う蒼空がいた。
『いや、神田がバカなのは初めて会ったときから気付いてたけどね、うん。あはは』
・・・笑っていやがる。
強がりとかそんなんじゃなくて、本気で面白がってる。
変な女。
『私はウザくてちょっとばかし変わってるの。知っといて』
神「・・・(もぐもぐ)・・・ちっ。」
蕎麦を飲み込み舌打ちをする。
『あのね、ついでだから教えてあげる。神田って、意外と感情が表情とか仕草とかで出てるんだよ』
・・・それは知らなかった。
絶対に出さないように心がけているつもりだったが・・・
ん?
てことは、俺がコイツを好きなこと・・・バレて・・・
蒼空が耳もとで囁く。
『神田って、リナリーのこと好きでしょ?』
・・・あ?
俺がリナリーを?
何寝ぼけたこと言ってんだ。
神「・・・何もわかってねーじゃねーか、バカ」
『えー、嘘。だって私を見る目とリナリーを見る目が違うもん・・・』
ばか。
それは、蒼空を見る目がトクベツ・・・
神「はっ、バカだな、お前。一生わかんねーよ、俺の好きなヤツなんて」
『・・・ふーん、いるんだ。好きな子』
しまった。
こいつ、もしかして・・・
俺をはめたな。
『神田ってやっぱりバカなんだね』
神「るせーっ!斬るぞ、バカ!!」
六幻を抜刀し、蒼空の喉もとに剣先を向ける。
『で、誰?』
蒼空がニコニコしながら聞いてくる。
畜生。
俺が斬らないことを知っていやがる。
蒼空は六幻を鞘におさめ、無表情で言う。
神「いない」
『ふーん、じゃぁ、イノセンス使って吐かせてもいい?』
・・・
こいつのイノセンス・・・
超性質悪!
神「ほぉ・・・じゃぁやってみろよ」
強がって言ってみる。
表情も、余裕そうに。
『・・・やっぱいい。これで聞いちゃうのは反則だから。でも、いつか絶対に探し出してやる!』
神「一生分からねーよ、お前には」
『分かるもん!・・・多分』
わかんねーよ。
っつーか絶対に知られちゃ困る。
神「ばーか」
『神田よりはバカじゃないもん』
神「・・・るせー」
『うーん、やっぱイノセンス使っちゃおうかな』
神「ふざけんな」
『使っちゃお♡』
神「やめっ・・・」
蒼空の口を慌てて塞ぐ。
『んぐっ』
神「はぁー。」
ラ「・・・なぁ、さっきから何やってるんさ?」
『「!?」』
いつの間に居たんだこのバカ兎・・・
神田は驚いて手を離してしまう。
『ねーラビ、神田の好きな人知ってる?』
ラ「そりゃぁ・・・「ほぉ・・・言ってみろよ」
神田は六幻を抜刀し、ラビの喉に近づける。
隙間は1mmも無いほどギリギリのところ。
ラ「わ、悪いさ、蒼空!言ったらマジで殺される・・・」
『ラビ!死んじゃっていいから教えて!』
ラ「蒼空酷いさぁー!!」
神「言えんのか?ラビ」
ラ「言えません言えません言えません!」
ちっ・・・
神田は六幻を鞘におさめ、舌打ちをする。
『・・・ラビのいぢわる。死んじゃっていいから教えてってゆったのに・・・』
蒼空が上目遣い&涙目で兎を見つめる。
神「(ムカッ)」
覚えてろよバカ兎!(←羨ましい)
ラ「さらりと酷いこと言うな!」
『ちぇー。』