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□君は笑って赦してくれるかな
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生臭い血なんて似合わない、アイツはその辺の女よりもずっと純粋で綺麗な女
ヴァリアー幹部のクセに、優しくて笑顔が一番似合うヤツ
よく笑うし、よく泣く

そんな蒼空との関係は、信頼の置ける仲間
あえて自分の想いはまだ伝えない
純粋すぎる蒼空は、もう少しぐらいスレてからじゃねぇと俺が汚しちまうだろ?


蒼空が雲の守護者として幹部になって10年が経つ
俺と蒼空は、今では一番気の合うパートナー
殺しで俺等を組ませたら敵無し
・・・まぁ、個人でも敵なんていねぇけど

仕事で無くても、一番俺が蒼空を理解してるし蒼空が俺を一番理解している

10年経っても相変わらずスレない純粋な蒼空は、いつでも俺の隣で笑っていた
なんかそれでもう満足かな、なんて思っていた
俺等は殺し屋だし、結婚だとかそんなことに縁が無い
俺も蒼空も仕事で死ぬことなんて無いだろうけど、それでも万一のことだってある
それより、そんな形式に囚われなくたって俺と蒼空の間にある絆は変わらないだろ?

一生俺を一番理解して、俺も蒼空だけを想う
それでいいと思っていた



それなのに、俺は裏切られた




真っ白なウエディングドレスを纏い、幸せそうに俺の知らない男の隣で笑う蒼空
よりによって、一般人の男を選ぶなんて、蒼空もどうかしている
彼女の唇からは、俺じゃない男の名前


触るな、蒼空の名を呼ぶな、顔を近付けるな、唇を奪うな・・・!


気付いたら、俺はナイフを男に向かって投げていた
蒼空のドレスはヤツの血で赤く染まる





「きゃーー!!」


つんざくような悲鳴と共に我先にと逃げ出す関係者達
頭、首、胸、至る所にナイフの刺さったソイツの隣には返り血を浴びた蒼空が呆然と立ちつくしている
まぁ・・・同業者は多少は驚いているものの、微動だにしない
ヴァリアー連中は、想像の範疇だったらしく微かに笑うヤツもいた



「弱い男を選ぶなんて、良い趣味してる」

『ベル・・・どうして・・・』

「遅かれ早かれ、一般人の男が蒼空につり合うワケがねぇよ」

『で、でも・・・』

「ししし、お前も、純白のドレスより返り血浴びた赫のドレスの方が似合ってるし、俺好みだぜ」

『・・・ベル・・・どうして、こんなこと・・・』

「全く鈍感なお姫様だな」

『え?』

「結婚式の続きをしようぜ。俺の花嫁」



君は笑って赦してくれるかな
(そして願わくば、この手を取って俺だけに愛を囁いて)

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