夢舞台

□拍手SS
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『?』



目の前に差し出された手に私は首を傾げた



「ん…」



催促するように再度突き付けられても、来るなりいきなりそんな事をされては意味も何も分からない



『ハオ…?えと…その手の意味は?』



「お菓子ちょうだい」



ああ、と少し納得する



今日は10月31日のハロウィンの日だから



でも何故か言葉とは裏腹にハオにはお菓子が欲しそうな感じがしない



いつも柔らかく微笑むその顔は無表情で、どちらかといえば不機嫌そうなオーラを醸し出しているような…



そもそもハオはそんなに甘い物が好きなわけじゃないし…



『ハオ、大丈夫?コーヒーでも飲む?』



そう聞いた途端、無表情だったハオがホッとしたみたいに表情を和らげた



「そう言ってくれるのは君だけだよ」



『???』



折角なので家に上がってもらって事情を聞くと、花組のみんな(特にマッチちゃん)が張り切ってお菓子を作り、山と化したそれをハオに勧めたのだという



『断り切れなかったんだね〜』



コポポと音を立てて沸かしたばかりの熱いお湯でエスプレッソを淹れてハオの前に出すと、待ってましたと言わんばかりに飲みだした



「フゥ…本当に参ったよ」



『でもそれで懲りたのなら何でまた私の所に催促しに来たの?』



「君のはそれほど甘くはないし、結構好きだから口直しになるかなって思ったんだ」



『無理しなくても向こうで普通にコーヒー飲めば良かったのに』



「…そう言われればそうだね…。君に会う事しか思い浮かばなかったよ」



『ふふ、それは光栄な事で』



「………ねぇ…」



『ん…?』



「そういえば、さっき言い損ねたけど…」



『何…?』



「Trick or treat…」



『え…っ?』



   ドサッ…



その言葉を理解する前にハオがスローモーションみたいにゆっくりと近寄ってきて、ふわりと優しく押されて、気付けば私はカーペットの上に押し倒されていた



『?………な、何…?』



「折角だからね。今日しかない行事に便乗してみようと思って」



『それと今の状況とどういう関係が…』



お菓子ならそこにってテーブルを指差したらその手を掴まれて…



「僕は目の前のものが欲しい」



『………』



それって私?



そう目だけで問いかけたらハオは優しく微笑んで肯定した



「さあ、選ばせてあげるよ」



『え、え〜…』



「Trick or treat?」



………これって、ハオの言うお菓子は私で、でもお菓子をあげなかったらイタズラで…



結局のところ私にとっては結果は同じで、選択肢も意味を持たない



嵌(は)められた



『はぁ…もう、ハオはずるい』



「選べないのなら僕の好きなようにさせてもらうよ」



『ん〜、じゃあどちらかといえばtreatで』



「了解」



優しく落とされるキスに、結局は私もハオを拒めない事を思い知る



とんでもない人に好かれて、でも私も惚れちゃったんだなぁって思うと何だか笑いが込み上げた



私に触れる手つきは大切なものを壊さないようにするみたいに優しくて、大事にされてる事が分かって嬉しくて…



でも少し…



本当に、少しだけ…



来年はTrickでもいいかなって思った…



読まれているのかもしれないけど、ハオはすぐ調子に乗るからこれは絶対に口にはしてあげない


来年までは…



だから、ハオ…?



来年も、その先もずっとずっと…



一緒にいようね…
 
 
 
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