夢舞台

□平行線トライアングル 前編
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何故あの人に惹かれたのか…





多分それは、どんなに考えても時間をかけても分からない事…





きっと深い理由なんてない





ただただ…この心があの人を求めるの





あの人じゃなきゃダメなの…










「おい、シオン」



『!?あ…は、はいっ!!』



急にあの人に名前を呼ばれて、私はつい兵隊さんのようにビシッと畏(かしこ)まってしまう。



「何をぼんやりしている。早く戻るぞ」



そう言ってあなたは私の…ううん、私達の帰るべき道を一人でさっさと行ってしまう。



傍から見たら冷たいと思う人もいるかもしれない。



でも…



本当は誰よりも優しい人だって…私は知ってるんだ…。



『待ってよ、蓮君!』



「お前が遅いのが悪い。早くついてこい」



そう言いながらもあなたは振り返って私が追いつくのを待っててくれる。



「貸せ」



   ガサッ



追いつくなり私の返答も聞かず、蓮君は私が持っていた買い物袋を素早くひったくった。



『あ…い、いいよ!私自分で持て…』



「勘違いするな。お前にこけられて晩飯を台無しにされてはたまらんからな」



また背を向けてスタスタと歩き出した蓮君の背中は、私とそう身長は変わらないのに、大きく…逞(たくま)しく見えた。



男の人の背中だ…。



『………ありがとう、蓮君…』





───蓮君のそういうトコ





好きだよ…





大好きだよ…───





『………ねぇ…蓮君…』



「何だ」



『………手……繋いでも、いい…?///』



言った途端に蓮君は振り向いて、まるで物珍しい生き物でも見るような目で私をじっと見つめた。



『(………うぅっ///は、恥ずかしい…///
や、やっぱり言わなきゃ良かったかな?///)』



蓮君の視線が恥ずかしくて、今更ながら自分が言った事を後悔した。



『ご、ごめん!やっぱりいい…!///』



「好きにしろ」



『………へっ!?///』



「聞こえていただろう。二度も言わすな」



『い、いいのっ!?///』



「くどい。嫌ならいいのだが?」



『いっ、嫌じゃないです!!///』



「ただし、控え室の旅館が見えるまでだぞ。
ホロホロ達がうるさいからな」



『う、うん……///
…えっ…と……じゃ、じゃあ…喜んで…繋がさせて頂きます…///』



本人の了承はもらえたけど、やっぱり恥ずかしくておずおずと遠慮がちに手を伸ばした。



お互いの指先が触れ合った瞬間、まるで電流が走ったような刺激に思わず手を引っ込めそうになったけど、それ以上にこの手を放したくない想いの方が強くて、スルリと指を絡ませて手を握った。



『(あったかい…)』



繋いだ手から伝わる温もりに嬉しくなってつい頬が緩んでしまうのを抑えられなかった。



『えへへ…///』



「何だ、気色の悪い」



『だって…嬉しいんだもん…///』



「?…何故だ?」



『…ん〜……何でだろ?』



「何だそれは。
相変わらずお前は変な奴だな」



蓮君は呆れたように笑った。



あの蓮君が笑ってくれた…。



それだけで私は嬉しかった。



だって…



蓮君は本当に楽しい時にしか笑わないから。



嘘や義理で笑ったりしないから…。



だから蓮君の笑顔は…



私にとってとても大切な宝物…。



その笑顔を守るためなら何でもできるって…そう私に思わせる。



命すら懸けても惜しくはない。



そんな事を思える自分に驚くけれど、そうまでして守りたいものができた事を嬉しく思う。



でも……



やっぱりおじいちゃんおばあちゃんになっても、一緒にいられたらいいな…。
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