Novel
□☆Mein schatz
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「――オーストリアさん!」
真っ白い小さな花をたくさん抱えて、彼女が楽しそうにやってきた。
「どうしました?ハンガリー。おや、その花は…」
その正体に気づいてはっとすると、彼女はまたにっこりと笑った。花に負けず劣らず可愛らしいその笑顔は、見る者を必ずどきりとさせる。お世辞ではなくて。
「はい、エーデルワイスです!先日友人からたくさんもらったんですが…たくさんありすぎて飾りきれなくて。エーデルワイスはオーストリアさんの花でもありますからよければ少しもらってくれませんか?」
「えぇ、それは構いませんが…」
「良かった!あ、それならもう飾っちゃいましょう、二人で飾ればきっとすぐ終わります。ただ…」
「ただ?」
「センスは、オーストリアさんの方が素敵ですけどね」
そう言って困ったように笑う彼女に、あまり深く考えずに「そんなことはありませんよ」と返していた。
「…え?」
「私は、貴方のセンスも好きですよ?ハンガリー。のびのびしてて、貴方らしくて」
そう言ってふっ、と微笑んでみせると、彼女の頬にカッと朱が走ったのが見えた。
「か、からかわないで下さいっ」
「からかってなんかいませんよ、本心です」
「〜〜〜」
照れと焦りで二の句がつげないでいる彼女を見て、思わず笑いそうになるのを抑える。彼女は本当に素直だ。
「そ、そういえばオーストリアさんの花がエーデルワイスって本当にぴったりですよね!」
何が「そういえば」だ。あまりに無理矢理な話の展開に今度こそ笑いそうになりながら、あくまで表情は変えずに「どういう意味です?」と聞き返す。
「だってエーデルワイスの花言葉は"高貴"ですもん」
ぴったりですよ、と彼女は続けた。
「そうでしょうか…」
少し引っかかった表情を浮かべる。そうか、彼女はこの花を"高貴"と取ったのか。