Novel

□★Sweet bitter sweet?
1ページ/2ページ




「え、今日お前誕生日なのか」

外で盛大に行われているパレードを見て初めて気付いたと言うように、イギリスが呟いた。

「そうだけど…だから来たんじゃないの?」
「そんなの知らね。いちいち誕生日なんか覚えてられるかよ」

そう言ってイギリスは、しれっと紅茶をすする。
相変わらず完璧なご作法で、この似非紳士が。

「何でお前ってそんなに可愛くないのかねぇ…」
「何だ、俺に『フランス誕生日おめでとう』とか語尾にハートでもつけながら笑顔で言ってほしいのか」

いやそれは望んでないけども。
てゆーかそんなイギリスはめちゃくちゃ気持ち悪い。迷わず病院に行くことをおすすめする。
だけどさぁ、せめて誕生日くらいはって思うじゃん?

「そうだよなぁ、だいたいお前に可愛さを求める方が間違ってんだよなぁ…」
「勝手にんなもん求めんな」
「でもせめてプレゼントとかさぁ…」
「誰がやるか。お前なんかだいっ嫌いだば―かば―か」

目の前で大層憎たらしい笑いを浮かべているイギリスを見て、俺はもう諦めることにした。

「はいはい俺だってお前なんかにプレゼントなんてもらいたくありませんよ―」

「え…」
「あ?」

突然傷ついたような顔をするイギリス。

「そ…そうだよな、俺からのプレゼントなんて欲しくないよな…はは…」
「え、いやそれは」
「いいんだ、わかってた…俺なんかどうせ…ぐすっ」

そして急に泣き出してしまった。
うあああぁぁマジでめんどくせぇこの坊っちゃん!!!!
俺は慌ててそれを宥める。

「いや!全然そんなことないから!!めちゃくちゃ欲しい!!すっげぇ欲しい!!」
「…っ!!ほんとか!?」
「当たり前だろ!!だから、な?」
「よかった…っあ、いや、今のは何でもなくて…その…し、仕方ないからやるよ!!!!」

イギリスが真っ赤になりながら差し出してきたのは、何やら紫色の物体。

「…何?これ」
「ケーキに決まってんだろばかぁ!!!!」

いや、ケーキはこんな色してませんから。

「べ、別にお前のために作った訳じゃないけどな!!余っただけだ!!」

うん、できれば余らせないでほしかったなお兄さん。
てゆーか明らかにこれ俺の為に作ってくれてるでしょ。さもさっきまで忘れてたようなフリしちゃってさぁ。

「気持ちだけはめちゃくちゃ嬉しいんだけどねぇ…」
「ん?何か言ったか?」
「いや…これ、やっぱ食べなきゃダメ?」

お兄さん誕生日が命日とか御免なんだけど。

「食べ物を食べる以外にどうするって言うんだ」
「え―っと…それは…食べ物と呼べるの?」
「当たり前だろ。ほら、」

食え!!とばかりにフォークにつき刺したテロ…じゃないケーキを差し出した。
どうやらとうとう覚悟を決めなければならないらしい。


俺はもしこれを食べて無事だったなら、その後こいつに本当においしい料理というものを作ってやろうと思いながら十字を切ってそれを口に入れた。


「―――Happy birthday,France.」


その時奴が悔しそうにぼそっと囁いた言葉は、ありがたくもらっておくとしようか。







Sweet bitter
sweet?

(苦さがあってこそ甘さがひきたつのさ!!)








→あとがき
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ