Novel
□☆奇襲は失敗、返り討ち
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予想した姿は、無かった。よくよく目を凝らしてみても、店内に見えるのはいつもいる他の店員と、それが今応対している客が一人。過去2週間のパターンかたして今日は出勤日がと思ったのに…。
もう辞めてしまったのだろうか、と思う。だとすればそれにこしたことはないのだけれど、それでもなんだか残念なような、そんな気がして。例えば小さな子どもが大事に守っていた秘密基地をある日誰か大人に掃除されてしまった、あの感じに似ているかもしれない。
何が自分をそこまで思わせているのかは、
――♪
どこからか、曲が聞こえてきた。おそらく近くのビルに備え付けられた大画面からだろう。テレビでもたまに見るCMの曲だから、かすかでもだいたい歌詞は拾える。
もしも私がCMをつくるなら
この想いをCMにして、
「君を振り向かせたい……か」
「誰が誰を振り向かせたいって?」
背後で、聞くはずの無い声がした。