Gift

□★un souhait
1ページ/5ページ




二人しかいない部屋のなかで響くのは、さっきからせわしなく動かされているペンの筆記音だけ。
俺が吐いた何度目かも分からないため息は、そんな空気に綺麗に溶け込んでいった。
と、それが相手にも聞こえたらしい(まぁ聞こえるようにしたんだから当然のことだが)、イギリスが不機嫌を顔一杯に貼り付けてこちらを向く。

「…することないなら帰れよクソ髭」
「お前な…もうちょっと来客に気を遣うとかできないわけ?」
「誰が来客だ。勝手に来て勝手に居座って、仕事の邪魔だ。さっさと帰れ。今すぐ帰れ。3秒以内に俺の前から消えろ」
「ちょ、そこまで拒否られるとお兄さんきつい…」
「はっ、勝手に言ってろば―か」

俺の言葉にそう言って最上級の嘲笑を返してくれたイギリスは、またしても手元に視線を落として仕事モードに入ってしまった。

イギリスの俺に対する扱いは、年中無休24時間いつでも酷い。だから今日のこのやりとりも、端から見れば至って普通なのかもしれなかった。

けれど、俺は知ってる。
目の前ですました顔して書類に向かってるこいつが、仕事に追われてここ数日間ほとんど寝ていないってこと。今日ここに来るときにイギリスの部下がこっそり教えてくれたし、自分じゃ気づいていないんだろうが目の下の隈だって隠せていない。
それに、ほら。

定期的にちょっかいをかける俺を邪険にしながらも、いつものようには突っかかってこないのが何よりの証拠。




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ