novel

□卒業
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「あれ?何してるんでさ先生」



ふと後ろから声が掛かり振り向くと、そこには栗色の髪をした男の子が1人。



「沖田くんこそどうしたの?ていうかまだ帰ってなかったの?」



今は放課後で俺は屋上にいる。
目の前の校庭からは部活動中の生徒の声が聞こえる。



「いえ、もうすぐ俺卒業でしょ?だから今のうちに思い出深い場所でも行っておこうかと思いましてねィ」



そう言うと沖田くんは俺の隣へとやって来た。



「思い出深い場所が屋上って…ただのサボり場だろーが」


「見て下せェ先生。皆部活頑張ってますねィ」


「オイ無視か。俺の話は無視かオイ」


ったく本当コイツには苦労したぜ…
遅刻や居眠り、サボり…まだまだあるけど悲しくなってくるから言わねぇ


そんなことを思っている横で沖田くんは校庭を眺めている。



「何?部活やりたいの?」


「今さらでさ。それに俺が汗かいて部活頑張るキャラですかィ?」


「まぁ確かにねー」


コイツは帰宅部で、放課後はよくこうやっておしゃべりしたっけなぁ
なんつーか…


「寂しいですねィ」


「え?」



心の中を読まれたかと思い、思わずドキッとした。


エスパーかコイツは


「こうやってアンタと話すことも無くなるって考えたら寂しくなっちまいやした」


「なんだよ。やけに素直じゃねぇか」


「そうですかィ?それより先生はどうなんでさァ?」


「俺?そんなもん問題児がいなくなって清々するわコノヤロー」


「そう、ですかィ…」



何となく落ち込んでる様子の沖田くんを横目で見る。



「…でも、やっぱり寂しいかもな」


「え?」



途端に顔を上げ、少し驚いた顔で俺を見る。



「お前みたいな問題児でも居なくなるって考えたら寂しいな」



ポンポンと沖田くんの頭を撫で俺は言う。
そんな沖田くんは照れ臭そうに目線を俺から逸らす。


あれ?照れちゃってんのかな?
可愛いとこあるじゃねーか
 
  
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