短編
□俺と、君と
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「お月さん、綺麗だなー…」
読書の秋。
食欲の秋。
運動の秋。
サボリの秋!
…と、もういつの間にか季節は秋に移り変わってしまったのです。
周りの木々も紅葉を始め、すっかり秋っぽくなっている。
誰もが嫌いとは言わないこの季節。
ところがどっこい。
寒がりなあたしは、朝は寒くて布団から中々出れず仕事に遅刻する回数が増えている今日この頃。
かと思えばお昼になるにつれて上昇していく気温。
その気温は夏並みで、暑いったらありゃしない。
その暑さにやられてつい仕事をサボってしまう。
今日なんて残業させられてしまう始末だ。
……まあ今現在その残業もサボっているわけだが。
とにかく、気温の差が激しいやら冬獅郎からの雷がよく落ちるやら、あたしにとっては過ごしにくい秋なのでございます。
「おい、こんなところで何やってる」
ほらほら来ました。
我が十番隊の隊長、かつあたしの彼氏が。
「お月見ー」
「…つまりサボりだろうが、酒まで持ち出しやがって」
「お酒おいしいよ?」
「朝は遅刻するわ昼も仕事サボるは残業さえサボるは…お前はどれだけサボれば気が済むんだ?」
「………えへ」
「えへじゃねえよ、こら」
まあ、自分でも最近ちょっとサボりすぎかなーとは思ってます、はい。
え?
ちょっとじゃない?
………。
そこは気にしちゃダメだよ。
「でもあの朝の寒さは反則ですよ」
「まあ確かに朝は寒ぃな」
「秋を感じますね」
「そうだな」
「そうそう、あの昼の暑さも反則ですよ」
「あぁ昼は暖けえな」
「温暖化を感じますね」
「……えらい現実的な感想だな」
「ありがとう」
「別に褒めてねえよ」
そんなバカみたいに他愛もない話をしていると、冬獅郎も諦めたのかあたしの隣に座った。
前にもこんなことがあった気がする。
「お酒飲む?」
「いらねえ」
「そっか、まだ子供だから飲めないもんね」
「……斬魄刀持ってくる」
「う、うそうそ!冗談だって!」
眉には相変わらず皺が寄って、軽く睨まれていたがあたしはそれを笑って凌ぐ。
しばらく二人で月を眺めてた。
今日は雲ひとつないお月見にはもってこいの天気。
月明かりが何物にも邪魔されずあたし達のもとへと届く。
あ、そうそう。
お月見といえばこの前十一番隊の人達が一角さんの頭を使ってお月見してたっけ。
あの時の一角さんの怒りようは見ていて本当におもしろかった、うん。
そんなことを考えてると、ふとあたしの肩にのしかかったわずかな重み。
何だろう、と思い横を見てみるとそこには小さな寝息をたてて気持ち良さそうに寝ている冬獅郎の姿。
さっきまで刻まれていた眉の皺は今は綺麗になくなっている。
こうしていると本当に子供みたいだ。
頬が緩むのが自分でもわかる。
思わず、ずっとこのままでいてくれー、なんて願ってしまった。
秋。
(君の隣が心地いい)
どことなく切ないのは
君を愛しすぎてるせい、