D灰
□紅い蜜 (未完)
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熱い?熱くない。
寒い?寒くない。
奴と目が合った瞬間の、痺れるようなピリッとした感覚は数分たった今も原因不明。だがこの時点で言える事が一つ、戦争が始まる。
俺を、俺の心臓を狙って、馬鹿デカイ炎が動き出す。
------…
高層ビルが建ち並ぶここは大都会の中心で、真夜中なのにも関わらず静まるどころか寧ろ騒がしい。こういう場所には自然と良からぬ輩も集まってくるもので、実際俺もその一人。俗にいう詐欺師。
いつもと同じように同じルートでふらふらしながら“獲物”を物色する。今日は好奇心大勢のお嬢様かはたまたお仕事命のオッサンか、何にしろ選ぶからにはハズレを引かない自信がある。生まれた時から、勘は冴える方なんでね。
――…カツン――…カツン
よく響く足音だった…
雑音だらけのこの街で本来聞こえるはずのない音。自分の存在を主張するように1つ2つ3つ4つ5...
最初に目に入ったのは奴の背中。赤い…燃えるように紅い髪。長さと美しさに一瞬女かと思ったが、そのガタイの良さから直ぐに男であろうことが理解できる。
「ククッ…今日はこいつだな」
次の瞬間、俺がこの男の視線に捕まることになるなんて、まだ知らなかった。