1球目
□umbrella
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バケツをひっくり返したような雨音が聞こえてくる。
練習が終わり部室でそれぞれ帰り支度している時、先ほどの天気とはうって変わり急に大雨が降ってきたのだ。
「げっ、俺傘持ってないよー」
着替え終わった水谷が窓の外を見てうな垂れている。
「あ、俺置き傘してるよ」
「俺も」
置き傘しているものが数名、自分のロッカーから傘を取り出している。
その中に三橋の姿があったのを花井は見つけた。
「おっ、三橋も置き傘してたのか?ラッキーだったな」
ポフっと三橋の柔らかい猫っ毛の頭に手を置いた。
「う、ん。ずっと 置きっぱなし だった、から」
『うひっ』と三橋は顔を綻ばせた。
(かっ、可愛い…!!!!)
花井は三橋の愛らしい笑顔に思わず顔を赤らめる。
三橋は首を傾げて花井を見た。
「花井 くん、傘 無いの? あ、のっ よかったら…」
「はーい、勝手に三橋に触らないでくださーい、このハゲが」
凶悪極まりない笑顔の阿部が三橋の頭に手を置いている花井の腕をギリギリと掴み上げていた。