1球目

□love drops
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昨日見たあの眩い笑顔が頭からずっと離れない…
もう一度、あの笑顔をオレの為だけに見せて欲しい。


「こ、んにち わ」
「三橋さん!いらっしゃい」

阿部のお見舞いで初めて阿部家へ訪れたのが昨日、田島達と一緒だったが今日は三橋1人、2度目のお見舞の為、阿部家へ赴いた。

「シュンく、ん?あ のっ あ、べく は…?」

嬉しそうに駆け寄って出迎えてくれる彼に手を引かれされるがまま玄関を上がり昨日通された1階にある客間、阿部が怪我の為使ってる部屋に向かうと思いきや階段の手前まで連れられた。

「兄ちゃんはいないよ、病院行ってるから」
「え…?びょ、いん…」

病院と聞いて三橋は阿部の怪我が悪化したのかと思ったのか顔から血の気が引いていた。
その様子を見てシュン慌てて言い換える。

「怪我が悪化したとかじゃないよっ、ただ診察に行ってるだけ!それに痛みは引いてきてるって言ってたし心配しなくても大丈夫だって!」

シュンの言葉に三橋は安堵したのか、ふにゃりと顔を緩ませた。
その三橋の顔を見た瞬間、シュンはドキリと胸の奥が揺れたのを感じた。

「よかっ た、阿部 くん…」
「……………」

あの笑顔は兄を思い浮かべたものだと思うとシュンは複雑な気持ちでいっぱいになった。

オレに‥オレだけに…あなたのその笑顔を…

「ねっ、三橋さん。兄ちゃんが帰ってくるまでオレの部屋に来ない?」
「シュン くんの 部屋?」

シュンは階段を数段上りニッコリと人懐こい笑顔で笑いかけると三橋に手を差し伸べる。

「そ、三橋さんに見せたい物もあるし、下で待っててもすることないでしょ?だから…ね?」
「う、ん!行くっ」

三橋は差し出されたシュンの手に摑まりそのまま階段を上がった。
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