1球目

□『子ネコ拾いました』シリーズ2
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今日は珍しく篠岡が風邪で休んだ。
いつもミハシの朝飯と昼飯は篠岡が用意してくれてるので(夜はみんなでオニギリ)今日は部員の俺達がミハシの飯を用意することになった。
朝は何人かが自分の朝飯にと持ってきていたパンやオニギリなどを分け与えたが昼飯はどうするかとみんなで話し合った結果、九組以外は皆昼休み後に移動教室や体育があって部室まで行く時間がないということで俺と田島が適任ということに決った。(田島は懐かれてるし)
阿部は授業放棄してでも自分がやるとひつこく粘っていたが栄口の見事なバット捌きによって解決したし。

「4時間目終わったらダッシュで購買行ってミハシの好きなもん買っていってやろーぜ!」

田島が張り切った様子で言うと俺も『だなっ』とその意見に同意した。
俺らが持ってきた昼飯を嬉しそうに頬張るミハシの姿を想像しながら俺は足取り軽く教室に向かったのだった…。

昼休み。

俺と田島が予定していた通りダッシュで購買に行きミハシの好きそうなパンを多めに買って部室に向かおうとしたその時だった。

「田島ぁー!お前、先生に呼ばれてっぞ!今すぐ職員室に来いってさ」

同じクラスのやつが田島を呼びに来て『あ、やべ!忘れてたー!!』と田島は何かを思い出したように叫んだ。

「泉、悪ぃけど先にミハシんとこ行っててくんねぇ?昨日までの提出の課題忘れててさー」
「了解、先に食ってるからな」

田島は『ちょっと絞られて来る』と職員室に走っていった。
そういえば、今までミハシと二人きりになったことなんてなかったような…?
いつも田島がいたし。
まぁ、怯えられてないから俺一人でもどうにかなんだろと色々考えていたらいつのまにかミハシがいる部室に着いていた。

「ミハシ、俺だ。開けてくれ」
「い、ずみ くん だっ」

最近花井が色々と物騒だから練習以外のときは鍵を閉めとくようにとミハシに教えたらしい。
因みに原因となった阿部が一人で来た場合は兎に角何があっても絶対に開けてはならないと厳しく言われていた気がする…。
ミハシは鍵を開けてパタパタと尻尾を振って嬉しそうに俺を出迎えた。

「お、かえり なさい」

まぁ、一応ここが今のミハシの家なわけだし…『おかえりなさい』と言われても不思議じゃないかもしれねぇが、そんな可愛い笑顔で嬉しそうに言われたら何か変な気分に……っておい!何考えてんだ俺!!あの変態(阿部)に病気でもうつされたか!?

「どぉ、した の?」

ミハシは一人百面相していた俺を不思議そうにちょんっと首を傾げて見ていた。

「いや、なんでもねぇよ。ほら、飯買ってきたから食おうぜ」
「う、まそ おっ!!」

俺が買ってきた大量のパンを目の前に広げてやるとミハシはキラキラした目をして今にもヨダレが垂れそうな勢いでそれらをじぃーっと見ていた。
あまりにも可愛くて可笑しかったから俺は思わずプッと吹きだして笑っていたらミハシはそれをみてキョトンとしていたがすぐに『フヒッ』と笑った。

「ほら、早く食わねぇと後から来る田島に食われんぞ?」
「うぇ!?た、食べるっ!!」

ミハシは慌ててパンを頬張り始める。一口一口を幸せそうな顔をして食べるので俺はその顔から目が離せず自分の飯を食うのが遅くなった。
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