6球目

□君に伝えたい
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自室の机に向かっていた花井は机に広げていた夏休みの課題の上に突っ伏して深い溜め息を吐いた……。

「はぁ……全く進まねぇ…」

解答欄が真っ白なままのテキストを閉じて一度大きく伸びをする。
そして机の端に置いていた携帯へ目を向け何かを考え込むようにジッと携帯を見つめた。

(原因はやっぱり……アレ、だよなぁ…)

また溜め息を吐きながら花井は見つめていた携帯を手に取ると数日前に田島から送られてきた一通のメールを開く。
すると携帯の画面には一枚の画像が映し出された……

「何度見てんだか俺は……///」

少し赤くなった顔の口元を片手で覆う花井の目に映っているのは、田島、泉、浜田に囲まれて照れながらも嬉しそうに微笑んで写っていた三橋だった………

数日前、田島に『コレ羨ましいだろ〜っ』と9組の仲良しさを見せびらかすかのように見せ付けられた田島の携帯に映しだされた1枚の画像。
花井はその画像を数秒程見て『別に…』と素っ気なく返したのだが何故か田島は笑いながら『ったく、素直じゃねーなぁ…あ、そうだ!コレ花井のケータイに送ってやるよ♪』と一方的に送り付けてきた物だった。

いらなければ消去してしまえばいい…だが花井はそれをすることはなくこの画像を保存したままにしていた。

「三橋…今頃何してんだろ…」

画像の三橋を指でそっと触れながら『ま、アイツの事だから食ってるか寝てるかそれともボールを弄ってるかのどれかだろうな』と口元を緩めて笑う。

毎日の様に会っていたのにたった3日だけ会えないだけでこんなにも三橋のことが気になる…
課題が手につかないくらいに今の花井の頭の中は三橋でいっぱいいっぱいに埋め尽くされていた………

「初めはただイライラさせられるだけだったのにな…」

必要以上にいつも1人オドオドしていて、少し大声を出しただけでもすぐにビクつかれてその度にイライラさせられる。
だけど、そんな三橋がどこか放っておけなかった…
そして気付いたら自然に三橋を目で追っている自分がいた…

「三橋……俺は……」

花井がポツリとそう溢すと同時に突然部屋のドアが開き『お兄ちゃーん!』と可愛らしい双子の重なった声が掛けられた…

「Σおっ、お前らっ!?///いつもノックしろって言ってんだろ!き、急にドア開けんなよな!////」
「「えー?どうしてー?」」

明らかに慌てふためき裏返った声でそう言う兄に妹達は不思議そうに首を同じ方向に傾げる。
そんな妹達に花井は先程の自分の呟きが2人に聞かれていなかったことを確信し安堵する。
そして咳払いをし『で、何か用かよ…』と短く尋ねた。

「あ、そうだった!お母さんがねっ」
「スイカ切ったからお兄ちゃんを呼んできてって」
「「ねーっ♪」」

顔を見合わせて楽しそうに母の言伝てを告げる妹達。

「わ、わかったから…先に行ってろ」
「「はーいっ」」

揃って片手を上げて返事をし、リビングへと駆けていく妹達の後ろ姿が見えなくなったのを確認した花井はガシガシと頭を掻いて手に持ったままの携帯の画面にもう一度目をやり苦笑する…

「ったく…プライバシーもへったくれもねぇな…」

携帯を閉じベッドの上へ放り投げた花井がリビングへ向かおうと部屋のドアノブに手を掛けたその時だった……

ピリリリ…っピリリリ…っ♪

ベッドに投げられた携帯がまるで花井を呼び止めるかのように着信音を響かせた…

「メール…?」

花井はドアノブから手を離しベッドで受信を知らせるランプを光らていた携帯を徐に拾い上げると届いたメールを確認する……

「!」

そのメールの受信先と内容に花井は大きく目を見開いた………

そのメールとは………

[From 三橋 廉]
“大好き 今すぐ会いたい”

「マ、マジかよ……/////」

そのメールに花井の鼓動はドクンドクンと早打つ………

そして………

“俺も。今からお前ん家に行くから家で待ってろ”

と、気が付いたら送信ボタンを押して部屋から飛び出していた……
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