哀歌夢
□出逢いとは
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―――死んだあとの世界とはどんなものだろうか。
誰かに呼びかけられたような気がしたとしたら・・
それは、私が最後にみた夢・・・なのだろうか?
**〜出逢いとは〜**
「おいっ、あんた!
おい!!」
ポタポタと毛の先や服のあちこちから垂れ落ちる水にもかまわず、目の前の猫の頬を叩く。
火楼の近くの水たまりともいえる小さな泉。
めったに誰も来ないような場所だが、まだ虚ろに侵されていない安全な水として、それなりに利用されてはいた。
そうしてコノエも・・・
始まりはバシャーンという盛大な音。何の音かと来てみれば一瞬だけ見えた手。よく見なくともそれが猫だと気付き、慌てて泉へと駆け付けた。
深いかと言われればそんなに深くなく、浅いかと言われればこれまたそうでもない。
とりあえず、足がつかない程度にはその泉は深いのだ。
どうにかこうにか助け出してみれば、まず、耳がないことに驚かされた。
唖然としつつも、すぐに気を取り直しこのあたりでは見たこともないその猫に、とにかく意識の確認をし頬を軽く叩き呼びかける、幸い呼吸は微かにできているようだ。
数度、声をかけた時だった
「大丈夫か!おいあんた!」
「・・・っ」
僅かに猫の瞼が開き、コノエはほっと安堵する。
虚ろな瞳でこちらを見る猫に、今度は落ち着いた声でゆっくりと大丈夫かと訊ねる。
「・・・げほっ」
何か応えようとしたのだろう、だがそのまま猫は横の地面へと少量の水を吐き、苦しそうにむせはじめた。
ぎこちなくはあったが、コノエも猫の背をさすってやる。
「はあっ、はあ・・・」
「平気か?」
「・・・・んん゛っ、はい、ごほっ」
しばらくそうしていて、ようやく落ち着いてきたらしい猫がゆっくりとこちらを向く。
「あり、あり・・が・・・とうございます…」
青ざめた顔で力無くへにゃりと笑うその様子は、今にもそのままバタリといってしまうのではないかと思うほど弱々しい。
すると、猫はふと何かに気がついたかのようにキョロキョロと周りを見回し始める。
「どうした?」
「・・・・あれ・・・」
「?」
「あ、いや・・・
あれ・・?」
・・・何なのだろう。
目の前の小さな猫は、それから何か考え込んだかと思えば、突然あーやらうーやらと唸り始め、はっと何か思いついたかのように顔を上げて再びあたりをきょろきょろと見まわす。
「何だ?」
その様子に焦れたコノエが、言いたいことは言えばいいと猫に促す。
しばらく何か考え込んだ猫は、困った顔でコノエに尋ねた
「えと・・・
すみません、
その、
ここは何のイベント会場なんでしょうか?」
・・・・。
「は?」