短編小説
□大石蔵人
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その人の墓は毎日の様に誰か来て掃除しているみたいに綺麗だった。私は持ってきた花を供え、コップ二つに酒を注ぎ、一つは墓へ、もう一つは自分の手に持った。
「……厳さん。お久し振りです。大石ですよ?分かります?あの頃にゃ、本当に世話になりました。こうして、今まで刑事を続けていけてるのも、あなたのお陰です。」
私はそう言うと手に持った酒を一口飲んだ。丁度その時、後ろから誰か近付いてくる気配を感じ、振り返ってみた。そこには、どこか厳さんの面影を感じる少年が立っていた。間違いない。お孫さんだ。
「あの〜、爺ちゃんの知り合いですか?」
大「えぇ。そうです。私、大石蔵人と申します。三橋龍一君ですねぇ?」
三橋君は私の名前を聞いて、少し考える様な仕草をした。
「…………あぁ!大石さんですか!爺ちゃん話に良く出てましたよ。だから、聞いた事あるなぁって思いましたよ!」
大「なっはっはっは!これは驚きだぁ。まさか、厳さんがあなたに私の話をしてくれているなんてねぇ。で、どう聞いていたんですか?」
「えーっと、確か、酒とバニーさんがとっても好きで、麻雀がやけに弱くて、本当に世話の妬ける刑事だって………あっ!これは爺ちゃんが言ってたんですからね(汗)」
大「なっはっはっは!いえいえ、いいんですよぅ。それは本当なんですから。ただ、麻雀の腕は以前より数段と上がりましたがね(笑)んっふっふっふ。」
「ははは。そうなんですか?……あっ、墓参りに来てくれたんですよね?その花、爺ちゃんが大好きだったんですよ。この時期に良くありましたね?」
大「んっふっふっふ。最近はハウス栽培とか何とかで時期関係なく手に入るみたいなんですよ。……それにしても、厳さんにお孫さんがいるなんて驚きました。確か、若い頃に奥さんを亡くしてそれからずっと一人だったと聞いていましたからねぇ。」
「ははは。実は、俺は孫と言っても血が繋がっていないんですよ。」