小説1(熱い夏)


□誓いの夜
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誰も居ない夜の小さな教会の入り口で。
真っ白なタキシードを着て緊張する成歩堂が立って居た。
「ゴドーさん、まだかな。そろそろ約束の時間なんだけど。」
おろおろと腕時計の時間を確認する。
「待たせたかい?コネコちゃん。」
からかうような口調で現れたゴドー。長身に成歩堂と同じ真っ白なタキシード、胸元には白の花を飾り、
いつものゴーグルを着けて立つ姿は成歩堂から見ても格好が良く、思わず見とれてしまう。
「素敵ですねぇ。ゴドーさん。」
「そういうアンタも似合っているぜ。まるほどう。」
手に持っていた真っ白な百合をあしらったブーケを成歩堂に差し出す。
成歩堂は首を振って。
「花嫁さんはゴドーさんでしょう。今日、僕はゴドーさんを僕の物にします。
僕の生涯の伴侶にします。」
「クっ…アンタがそうしたいなら…」
「指輪もしっかりと用意してきましたよ。今夜は牧師さんも立ち会わない本当に二人だけの結婚式です。
1時間だけ教会も借りましたし…さぁ…行きましょう。ゴドーさん。ウウン。神乃木荘龍さん。」
「ああ、解ったぜ…」
ゴドーの手を取り、二人で教会の扉を開ければ、真っ赤な絨毯がまっすぐ敷かれており。その先には瞼を瞑ったマリア様が自愛の笑みを浮かべて居て。
成歩堂とゴドーは手を繋ぎ意を決したようにゆっくりとマリア様の前へ歩を進めて行き、マリア様の前に来ると二人でマリア様を見上げ。
成歩堂がまず口を開いて。
「僕は今日、この人を娶りたいと思います。病める時も健やかなる時も…いつまでも神乃木さんと一緒に。」
続いてゴドーがマリア様に向かって語りかける。
「なぁ。アンタ。どうか俺達を見守ってくれ。決して世間様に胸を張って言える結婚じゃねぇ。
だか、愛する気持ちは本物だ。俺は成歩堂を愛している…」
「ゴドーさん。僕も貴方の事を愛していますよ。」
二人はゆっくりと向かい合った。ポケットから小さな箱を取り出して、その中には二つのプラチナの指輪が入って居て…そのうちの一つを手に取るとゴドーの左手を手に取って、ゆっくりと薬指に指輪を嵌めて行った。
「これで、貴方は僕の物ですよ。ゴドーさん。」
「今度は俺からアンタに嵌めさせてくれ。」
成歩堂から指輪を受け取って、成歩堂の薬指にそっと指輪をゴドーは嵌める。
嬉しそうににっこりと成歩堂は微笑んでゴドーを見上げた。
二人はゆっくりと顔を寄せて、誓いのキスをする。
キスが終わると成歩堂がゴドーに向かって呟いた。
「終わりましたね。」
「ああ…。」
「これで、ゴドーさんは僕のお嫁さんですよ。」
「幸せだねぇ。これが夢なら覚めないで欲しいもんだ。」
「大丈夫。覚めませんよ。さぁ行きましょうか。」
ゴドーの手を取ると成歩堂は走り出した。
「おい、どこに行くんだ???」
慌てて引っ張られるように走りだすゴドー。
「夜景の綺麗な所があるんですよ。一緒に見に行きましょう。」
教会の正面扉から出て、庭の裏の方に成歩堂はゴドーを連れて行く。
パァっと開けたその景色は、左方の海の向こう側に見える煌びやかな街の灯りで。
遠くの方に行き交う車のヘッドライトや、高層ビルの灯りの美しさに、思わずハァとゴドーは息を吐いた。
「見えますか?ゴドーさん。あの綺麗な夜景が。貴方に見せたかったんですよ。」
「赤みがかかって見えるが…解るぜ。綺麗だな。」
夜景に視線を向けていた成歩堂がゴドーの顔に視線を移して、ポツリと呟いた。
「僕、今日の事、忘れません。だからゴドーさんも忘れないで下さいね。」
「ああ。忘れるもんか。一生…いや、死んだって覚えておいてやるぜ。」
「死んじゃ駄目ですよ。僕とずっと一緒に居て下さい。生きてずっと一緒に。」
しばらく二人は身を寄せ合いながらキラキラ光る夜景を見つめて居た。
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