MAJOR

□近くなった距離
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夕日が2人を赤く照らし出している。

並んで歩く影は、いつもよりも少し距離が近い。


「………本田……。」

「あ?何だよ。」

「…ううん、何でもない!」

さっきからこの会話を何度繰り返しただろうか。

名前を呼ばれて振り向けば、
満足そうな顔をして何でもない、と告げてまた歩き出す。


(女心って分かんねー…。)


そろそろ本意を知りたくなってきた吾郎は思いきって清水に問いかけた。

「お前、さっきから何だよ。
何度も何度も名前呼んで。」


すると清水はえへへ、と笑いながら言った。

「だって…10年も片想いだったから…今、こうして本田と一緒に居れることがまだ信じられないんだ。
だから名前呼んで確かめてたんだ…。」

そう言いながら向けた顔の赤さは、きっと夕日のせいだけじゃないはずだ。

そんな清水を見て、吾郎に急に照れが襲ってきた。

(…反則だろ、それ……。)

思わず鼻の辺りを掻いてしまう。

それを見た清水はプッと笑い出した。


「な、何笑ってやがんだ!」

まだ笑いが治まらないのか、目に涙を浮かべながら清水が言った。

「だって、お前照れてるだろ?
お前、照れた時に鼻の辺り掻く癖あるもんな!」


そう言うとまた笑い出した。


「なっ……!あーもううるせー!
さっさと行くぞ!」

「あ、ちょっと!」


そう言って半ば強引的に手を掴んだ吾郎。

赤くなっているであろう吾郎の顔を想像しながら、その手を握り返す清水。



「なあ、本田。」

「……何だよ。」

「……大好きだからな。」

「……おう……。」





落ちかけた太陽が2人を照らしている。

赤く染まった光は、さっきよりも近くなった2人の影を鮮明に写し出していた。









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