ZCの小箱

□D援軍登場!
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そのまますごすごとカンセルの家に引き上げたザックスは、この世の終わりのような顔で頭を抱えていた。

「オレ、そんな怖かった?」
しおらしい声でカンセルに問いかけるザックスがなんだかあまりにミジメで、カンセルもどう慰めていいかわからなかった。

「お前さ、オレのアドバイス完璧に忘れてただろう?」
「え?あ、うん……」
クラウド前にして飢えた狼のようにがっついて飛びついたのだ。
もっとさりげなく話しかけるはずだったのに。

「オレ、本当にただ話をしようとしただけなんだよ」

「う〜〜ん、なんかね、クラウドの周りがめっちゃお前のこと警戒してるな。多分お前完全に悪者」

「でも…、クラウドがオレのこと心から嫌ってるとは思えないんだけど」
ザックスはカンセルが差し出した冷えたビールをぷしゅっと開けると一気に飲み干した。

「お前のその自信はどっから来るの?」

ザックスはうざいくらい遠い目をした。

「だって、元々誘ったのはクラウドだから……」

ザックスのその言葉に、カンセルは飲みかけていたビールを盛大に噴いた。

ビールはザックスの顔を直撃して、泡だらけにした。
「ぷは!なんだよ!カンセル!きたねえな〜〜そんなに驚くこたねえのに」

カンセルはげほげほっとむせた咳をしながら胸を押さえて洗面所からタオルを持ってくると一本ザックスに投げ、自分も飛び散ったビールをふき取った。

「いや、マジで驚くって!!あのクラウド君がそんなことするなんて想像もつかん!お前やっぱり薬でも決めてたんじゃね?」

ザックスは首を横に振った。
「たぶん病気の後遺症じゃないかなとも思ったんだけど、同室の連中をスルーしてオレを選んでくれたってことはさ……」
意外にもザックスは核心に近づいてきていた。
野生の勘で、どうやらクラウドが誘いをかけたのは自分限定じゃないかって思うようになったのだ。

「あのクラウドくんが誘うって……」
カンセルも絶句した。うっかり想像してみたら、なんとも強烈。

ザックスはタオルで顔を拭きかけたままぼ〜〜っと彼方を見つめると、魂の抜けたような恍惚とした表情を浮かべた。

「クラウドったら……」
ああ、とてもじゃねえけどもったいなくてオレの口からはしゃべれない!天国の経験っていうのは表現できねえ……とかザックスはぶつぶつ言い出した。

カンセルは呆れた。ダメだ、こりゃ。

「百歩譲ってクラウドがお前を誘ったのは認めるとしよう。でもそれってぜってえオカシイって思わねえ?じゃなんで今クラウドはあんなにお前を避けてるんだ?」

ザックスはショボンとしてビールの缶をぺこりぺこりと潰した。

「それがわからねえからちゃんと話をしたいんだ」

「でもクラウドは逃げる」

カンセルは新しいビールを冷蔵庫から持ってきた。
ザックスの手の中のビール缶は、ザックスがうじうじ潰してるうちに、ぺしゃんこのアルミの塊になった。

「わかった。ともかくなんとしてもクラウドを捕まえよう。クラウド捕まえないことにゃ話が見えん」
「カンセル!協力してくれるか?」
カンセルはビールを飲みながらうんうんとうなずいた。
「俺としても何だか解せない。クラウドの逃げ方が変だからな」

「変?」

「ああ、案外お前のことが好きすぎたりしてな」

ザックスは感動のあまり手の中のビールを握り潰した。
ぶしゅっと派手にビールが吹き上げてザックスの顔を濡らしたが、ザックスは気にとめなかった。

「好き?オレを?」
カンセルはうなずいた。

「ほら、女子校生なんかがきゃ〜とか言って好きな子の前で逃げるだろ?そんな気もしないでもない」

「カンセル!!」
ザックスはビールを滴らせたままいきなりカンセルに抱きついた。
「嬉しいこと言ってくれるぜ!!」

「やめれ!キモイ!汚い!ま、作戦変更だ。狩りは外ですっか」
カンセルも意地になった。

作戦変更。
抱きついてくるザックスを邪険に押しのけると、タオルで顔をぬぐいながらカンセルは自分のパソコンを開いた。
ーーこうなったら意地でもクラウドを捕まえてやる!!
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