三行小話

□赤蒼黄茶水鳥春夏
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*赤
焼け付くような痛みを脇腹におぼえ、手で押さえたらばたばたと血が指の間から溢れてきた。
戦場の白い雪の上、クラウドの血が花びらのように赤く散らばる。
こんなところで死んだらザックスが哀しむ、と遠のく意識の中ぼんやり思った。

*蒼
はるか遠くの世界を彷徨ってるようなクラウドの蒼い瞳を覗き込む。
蒼い淵の奥底にちらりと水色のきらめきを見つけたような気がした。
オマエは絶対に元に戻る、とザックスはクラウドの痩せた体を抱きしめた。

*黄
一面の菜の花が見たいとあの日ザックスは言った。
春も盛りの今日、一人でフェンリルを駆り郊外の菜の花畑にやってきた。
明るく輝く菜の花畑に吹く風の中、ザックスの笑い声を聞いたような気がした。

*茶
チョコレートなんて大嫌いだ、と機嫌悪そうにクラウドが言った。
ザックスは大粒のチョコレートを一つ口に含むと、笑いながらクラウドにキスをした。
コイツは受け取れ、と口移しでほろ苦いチョコレートをクラウドの口の中におしこんだ。

*水
そんなわけでまあ、水に流してくれ、とザックスがバツが悪そうに笑った。
どこの水に流すんだよ、とクラウドがそっぽを向いた。
汗とか唾液とかアレとか、とクラウドの両頬をはさんでささやく悪いザックスだった。

*鳥
気がつくと鳥になって高く高く飛んでいた。
もしかしたらオレはずいぶん前に死んで転生したのかもしれない・・・
遥か地上にプラチナブロンドは見えないかと無意識に探し回る。

*春
櫻咲いたら出会ってから一年が過ぎる。
もう一年かまだ一年がわからないが、ともかく一年二人とも無事だった。
今を大事にしような、と言いながらザックスは両腕に囲い込むようにクラウドを抱く。


*夏
心頭滅却すれば火もまた涼しって知ってるか?と言いながらザックスが密着してきた。
暑いもんは暑いんだよ!とクラウドが突き放す。
夏にはこの冷たさがたまらん、とザックスがまたクラウドを抱きしめた。

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