ZCの小箱
□C追えば逃げるの法則
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黙りこくってぼんやり空を見てるザックスをやれやれという風に横目で見ながら、カンセルはカウンセラーのように改まって聞いてきた。
「さて、ザックス君、悩みの種があの金髪坊やであることは確かなようだね」
「ん〜〜、まあね……」
隠しておいてもしょうがない。ザックスはそう答えてからヤケのように冷えた生ビールをごくごく飲み干した。
「もどかしいだろう、苦しいだろう〜〜、え、おい!」
カンセルが肘でつついたので、ザックスはドン!とジョッキをテーブルに置き、
「ああ」と呆けたように答えた。
カンセルはにやにやした。
「好きって伝えにくいよな、相手は男だしさ」
「あ〜……、まあね」
ザックスが小声で、ある意味伝えたとも言えるけど、とつぶやいたのがカンセルの耳にちゃんと入った。
「お!、一応伝えたわけだ」
「う〜〜ん、ま、それなりに」
カンセルはいつものザックスらしくない歯切れの悪さにイラっとしてきた。
「接触はしたのか?」
「ああ。うん接触…、した、スゴク」
「そうか、そりゃ良かったな。手くらい握るだけでも恋してる時はときめくもんだからな」
「……」
「ん?どうした?手も握れずウジウジしてたのか?ザックス様ともあろうものが」
「いや、握った」
カンセルはわざとらしく驚いた。
「ほう〜〜!偉い、偉い!」
カンセルがバカにしたようにザックスの頭を撫でた。
「初恋気分だな、ザックス」
へい、特大ステーキ定食二丁!と後ろから威勢のいい声が聞こえた。
2人の前に、じゅーじゅーと脂を散らしながら湯気を立てている特大ステーキがどんと置かれた。
とりあえず2人は無言で熱々のステーキをわしわしと食べだした。
ほぼ三分の二食べ終わり、やっと付け合せのポテトなんぞをつまむ余裕も出たころ、カンセルは再びザックスに質問した。
「オレもさ、あの金髪くんのことを調べてみたんだけど、なかなか難攻不落らしいな。男はダイッキライって公言してるって話だぜ」
「あああ、うううん」
ザックスはフォークでポテトを突きまわした。
「んで、クラウドくんとの関係は少しは進んだわけ?」
ザックスは食べもしないのに、ポテトをコマギレにした。
「ああ、進んだっていえば進んだかな……」
「ほう!さすがタラシの帝王だな!キスくらいしちゃったわけ?」
「う、うん」
カンセルはちょっと驚いた。
「ほう〜〜!!会って二回目でキスって!さすがだな!相手はなんと言ってもあのクラウドくんだもんな」
「あ、もうちょっと…、進んだかな」
ザックスは下を向いてステーキの残りをこれまた細かく刻みだした。
「ええ!まさか押し倒したりしてないよな〜〜」
ザックスはくいと顔をもたげた。
「しちゃった……」
カンセルはへ??と首を傾けた。
「クラウドと寝ちゃった」
カンセルは口に運びかけたポテトをぽとりと落とした。
「寝た?」
ザックスは相変らず夢見るようなとろんとした目付きで彼方を見つめてる。
「ああ、寝た」
「ホント?」
「ホント」
カンセルは驚きのあまり、ポテトを落としたのにも気づかず、ガリリとフォークを齧った。
フォークの先が曲がった。
「嘘だろう?」
「最高だった」
ザックスは頭を抱えると自分の髪をかきむしった。
「クラウド……」
ほお〜と気の抜けたような溜め息をつきながらザックスがつぶやいた。
「オレは辛いよ……」
うわ、ダメだ、これは。カンセルは直感した。
魂が……抜けてる、完璧に。